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【日刊マンガガイド】『住職系女子』第5巻 竹内七生

2014/07/04


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『住職系女子』第5巻
竹内七生 講談社 \463
(2014年6月13日発売)


お仕事モノのおもしろさは、もちろん職種の「興味深さ」にもかかってくるけれど、大切なのはやはりキャラクターの人物像と、きっちりとした物語。その職業の大変さや楽しみ、その環境に生きる人たちの悩みや喜びを、キャラクターや物語を通して、魅力的に描けるかどうかなのだと思う。

『住職系女子』は、タイトルのとおり、父・義徳が愛人を作って出ていってしまったことで、女性ながらに実家のお寺・真贋寺の副住職を務めることになった25歳の女子・麻生美鶴が主人公。
真贋寺に、すでに父に捨てられていた愛人・理沙子、その息子で美鶴にとっては腹違いの弟に当たる小学生の律、さらに蒸発していた父も戻ってきたことで、美鶴の仕事にも気持ちにも、さまざまな変化が訪れる。

まっすぐだけれど不器用で、それだけにオトコ前な美鶴のキャラクターが、読んでいてじつに気持ちがいい。
最新5巻では、突然の帰省をめぐってもめる友人・瑛子と、その母親・治子を諭すことになる美鶴。本音を語らず意地ばかりはる2人に、「さっさと本当に言いたいこと言え うっとおしい! 女子の恋バナか!」「一言心配だって言えばいいでしょ このツンデレ!」と声をあらげる。言いぶりは男勝りでも、その言いようは、それこそ女子ならでは。
さらに本巻では、精神的なトラウマを抱える理沙子の心を、美鶴が開いていくことにもなって……。

「以心伝心」や「四苦八苦」といった仏教の教えを、コミカルさを交え、自然とエピソードに盛り込んでいるのも本作のポイント。
住職の仕事同様、まさに人に寄り添っている作品で、作品の在り方と魅力自体も住職系だ。

「知識が足りなくても 物事をありのままに見つめて真理を見極める般若の智慧があればよいんだ」というのは、義徳が美鶴に向けかけた言葉。
本作もまた、知識=雑学や情報がありながらも、それだけでは終わらない、深みのある作品になっている。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。

単行本情報

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