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『ヴィンランド・サガ』 第19巻 幸村誠 【日刊マンガガイド】

2017/05/31


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ヴィンランド・サガ』



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『ヴィンランド・サガ』 第19巻
幸村誠 講談社 ¥590+税
(2017年4月21日発売)


今から一千年ほど昔の北ヨーロッパ。あらゆる地に現れ暴虐のかぎりをつくした最強の民族・ヴァイキングの世界を、『プラネテス』の幸村誠が卓越した筆力で描いたマンガである。

父の復讐で傭兵集団に取りついたり、奴隷に身をやつしたりと、波乱に満ちた主人公・トルフィンの生きざま。彼は「戦争も奴隷もない平和な国」を建国することを目指して、同郷のレイフたちと旅をしている。

ところが、周囲がそれを許さない。ヨーム戦士団の跡目争いに巻きこまれたトルフィンは、強引に片方の陣営「ヴァグン大隊」に連れていかれる。
そこで知った父の死の真相は、黒幕がフローキであるというものだった。

「一瞬……頭が真っ白になって……怒りがオレを……完全に支配した……」

過去の殺しあいを悔いていたトルフィンは、不殺を誓っていた。 後悔を背負って、平和を目指してるにもかかわらず、憤りに我を忘れたトルフィン。父を殺された怒りを、完全には克服していないのだ。
人は簡単には変われない。手で覆った顔から、憤怒が熱となってほとばしるトルフィン。
残酷な人間の性(サガ)をひとコマで表現していて、心まで震えるシーンである。ショックを受けたトルフィンが、ひとり言のようにつぶやいた。

「いつになったらオレは……生まれ変われるのだろう……」
「もっと優しい人間になりたいのに。もっと強い人間になりたいのに」

『ヴィンランド・サガ』の根底に流れるテーマとして、「強さとはなんなのか」という問いかけがある。
武力で他人をねじ伏せる力(ブリテン編)。権力で他人を虐げる力(奴隷編)。
いろいろな「強さ」が描かれてきたが、トルフィンの父・トールズが持ちあわせていた「強さ」には、トルフィンはまだ少し届かないみたいだ。

人殺し、戦争といった人間の業や罪を描く迫力もさることながら、必要以上に暗くならない笑えるギャグシーンも健在。
トルフィン一行を追いかけるシグルドは、ヨーム戦士団の奴隷になっていた。

「今日まで生き恥をさらしてたのが何かの間違いだったんだ 戦って死ぬ!!」

奴隷の身分にブチ切れたシグルドは反抗するも、首領・トルケルに会った瞬間、
「うわ!! うわうわうわうわーーーーー!!」「握手して下さい うわーーーっ!!」「スゲェ!! ヤベェ!! カッケー!!」と、ファン丸出しで大興奮。
さっきまで死を覚悟していたのに、なんともミーハー根性なシグルドってば。

そのトルケルも、『ヴィンランド・サガ』では一番のコミックリリーフだ。

「ヴァーーグーーンーーくーーん!! あーーーそォーーーぼーーーッ!!」

戦争、殺しあいもトルケルにとっては缶蹴りか鬼ごっこみたいな子どもの遊び。無双の強さを誇るトルケルの、子どものような喋り方もギャップがあって、憎めない愛嬌がある。

後半、トルケルとどことなく似ている戦闘狂の刺客がトルフィンを追いつめる。槍使いのガルム。グリップの長さを調整して相手を翻弄する槍の達人で、トルフィンが防戦一方に押されてしまうほどの手練れである。
シグルドの武器は分銅のついた鎖だった。同行している狩人のヒルダはボウガン使い。『ヴィンランド・サガ』は新章になってから、変わった武器が次々に出てくるのもおもしろい。

トルケルの予想外な行動、トルフィン一行に迫る危機。事態は急変して、続きが気になるところで次巻へ続く。
ますます目が離せない戦記モノだ。



<文・かーずSP>
個人ニュースサイト「かーずSP」管理人。 青春時代が暗黒だったので、ラブコメ作品を摂取して人生の記憶を書き換えてます。

単行本情報

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