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『思春期ビターチェンジ』 第7巻 将良 【日刊マンガガイド】

2017/07/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『思春期ビターチェンジ』

  
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『思春期ビターチェンジ』 第7巻
将良 ほるぷ出版 ¥570+税
(2017年6月15日発売)


ユイとユウタは幼なじみで、小さい頃に事故でそれぞれの肉体と精神が入れ替わってしまった。
以来、中学校、高校と入れ替わったまま生きてきた。本作はそんな2人の日常をラブコメテイストの4コマフォーマットを軸に描く物語。

ちょっと変わったラブコメが好きな人にはすごく強くオススメしたい。

この話を読み始めた頃、筆者は主人公たちが恋愛しないことがおもしろいと思っていた。
男女の間に友情が成立するか、というのはよくあるくだらない問題で、正解は簡単だ。
“男女の間であろうとなかろうと、友情は成立する。そもそも友情と恋愛は矛盾しないから、友人でありかつ恋人であることは可能であり、男女の間で友情が成立しつつ恋人になることも、恋人でなくなってから友人のままでいることも可能だ”という明快なものになる、はずだ。

この正解がいかに明快であるとしても、ご覧のとおり、いくらかのややこしさはある。
そこに男女それぞれの個人差があいまって、ややこしいことになる。
そのややこしさは実際の恋愛や友情のややこしさと同じくらい面倒な話で、でもそこに人情の機微が宿る。

さて本作『思春期ビターチェンジ』は、恋愛にはまだ早い年齢から話が始まって、互いの身体に互いの精神が入れ替わってしまうという混乱が描かれ、そこに戸惑ううちにまずは友情が確認され、そのあとで恋愛要素が芽吹き出す。
その恋愛要素はクリシェな感じがして、「そっちにいかないでくれー!」と思いながら読んだことをここに告白しておきたい。
でももし、恋愛が友情の発展形で、特殊化してしまった感情なのだとしたら、この相互理解と違和感をふまえたうえでの友情から、その尊重の果てに恋愛へと至ってしまうのはむしろ自然な気がしてくる。

恋愛で苦しいのは、そしてそれが広くエンタメとして需要されるのは、恋愛というものが、単なる友情ではなくて、特殊化してしまった友情だからなのかもしれない。
友情は、なんとなくお互いに抱いていても汎用性のある感覚だけれど、それが特殊化したものが恋愛感情なのだとしたら、なんとなく共有されていた汎用性のある友情から、感情を特殊化してしまったのは自分だけかもしれない、という恐ろしい疑念が生じてくる。

感情を相手に精確に伝えることは無理だし、伝えられたところで、それを相手が受け入れてくれるとはかぎらない。
恋愛にまつわる、当たり前の困惑。

でも本作においては、相手の身体と名前を、何年という長いスパン、それも思春期という重大な時期に、かわって生きるという経験をして、だれよりも相手のことをわかっている立場でありながら、自分のなかに芽生えてしまった感情だけは相手と共有している自信を持てない、ということに気づかされる。

抽象的なことを延々と書いてしまったけれど、つまりそんな難しい恋慕をつのらせてしまうユイたちがかわいすぎるということ。
のんびりと日常を生きているように見えて、しっかりと生きていて、あっさりとした絵柄で描かれながらキャラクターとしての深みを積み重ねてきたことがよくわかる。

彼らの恋愛はどうなってしまうんだろう。次の巻が待ち遠しくてたまらない。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

単行本情報

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