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『ハクメイとミコチ』第3巻 樫木祐人 【日刊マンガガイド】

2015/01/31


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『ハクメイとミコチ』第3巻
樫木祐人 KADOKAWA \620+税
(2015年1月15日発売)


メシのうまそうなマンガにハズレはない。
食事そのものを題材とする料理マンガはさておくとして、通常のマンガのなかで描かれる食事シーンが「うまそう」だと、それだけで作品の魅力がいや増す。満賀道雄が「ンマーーイ!」と叫んだら、誰だって松葉のラーメンを食べたくなるでしょう?
「メシうまマンガ」(=メシのうまそうなマンガ)とは、つまりそれだけ細部まで凝りまくっている作品なわけで、そのこだわりが誌面全体にあふれていて多幸感をかもし出す。

樫木祐人『ハクメイとミコチ』は、いまもっともホットな「メシうまマンガ」である。
身長わずか9センチメートルのハクメイとミコチは、自然豊かな森のなかで暮らしている。小人だけでなく動物や昆虫たちも登場し、小人たちと会話し、同等に社会を営んでいる不思議なファンタジー世界。ハクメイとミコチは三頭身のかわいらしいデフォルメっぽいキャラでありながら、彼女たちの生活スタイルはやけにリアルだ。
ハクメイとミコチはそれぞれ仕事を持っており、働き、ご飯を食べ、時には町に出て買い物をしたり、酔いつぶれたりする。そんな「ちょっと不思議な世界」の日常をかいま見るような物語である。

出てくるメシの「うまそう」な感じは1巻から炸裂しており、いわば本作の醍醐味。
この3巻でも、「蜂蜜館ジュレップ」や「キノコのオイル煮」「カヌレ」などが出てくる。ハクメイとミコチの食事、住居、衣服が丹念に描き込まれ、徹底して描かれる衣食住のディテールが彼女たちの息吹となってたち現れてくる。
いわば不思議世界の「日常もの」といえるが、今巻では蜂蜜館の人々との騒動が物語の推進力となっているのも特徴。

とりあえず書影の絵柄を見てピンときた人には、強くオススメしたい。
とてつもなく愛らしく、穏やかな世界が待っています。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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