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『天智と天武-新説・日本書紀-』第7巻 中村真理子(著) 園村昌弘(案) 【日刊マンガガイド】

2015/04/28


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『天智と天武 -新説・日本書紀-』第7巻
中村真理子(著) 園村昌弘(案) 小学館 \552+税
(2015年3月30日発売)


のちに第38代天皇となる中大兄皇子(天智天皇)と腹心の中臣鎌足が、朝廷を我が物とする豪族・蘇我入鹿を暗殺して、天皇中心の政治改革を行った“大化の改新”(646年)。
『天智と天武-新説・日本書紀-』は、その大化の改新から物語の幕を開けるが、導入として描かれるのは明治17(1884)年の出来事だ。

一説で聖徳太子の怨霊鎮めのため建立されたと云われる、奈良・法隆寺。明治のこの年、法隆寺・夢殿の秘仏“救世観音”の封印が解かれる。
仏像でありながら、後頭部に釘が打ちこまれた救世観音。
そこから聖徳太子と蘇我入鹿のつながり、入鹿を討った中大兄皇子と、その弟で第40代天皇となる大海人皇子(天武天皇)との因縁が浮かびあがる……。

ミステリーを思わせる、この導入部にグッと心を掴まれた読者も多いはずだ。
種明かしをしてしまえば、本作は“新説・日本書紀”のタイトルのとおり、新たな視点で古代史を読み解いたドラマだ。一般に伝わる大化の改新は、悪である蘇我入鹿を、正義である中大兄皇子と中臣鎌足が成敗したというもの。

しかし本作では、その視点は逆転する。

本作における大化の改新とは、野心家の中大兄皇子と、実は百済の王子である中臣鎌足=余豊璋によるクーデター。また、実の兄弟である中大兄皇子と大海人皇子は敵対していくことになるが、それは中大兄皇子が大海人皇子の父の仇だからにほかならない。
大海人皇子は、蘇我入鹿と斉明女帝の間に出来た不義の子。父の復讐を果たすべく、本心を隠して大海人皇子は中大兄皇子の従者となる。 そのなかで人知れずぶつかりあう、それぞれの策略と想いと野望。それが本作の描き出す新説だ。

大海人皇子=入鹿の子ども説や鎌足=豊璋説は、正史の謎を埋めるべく、実際に歴史評論家たちが唱えている説だ。歴史のロマンとミステリーでも楽しませてくれる本作だが、作品に厚みを与えているのは男たちの愛憎のドラマだ。
復讐に燃える正義の人である大海人皇子と、悪の人である中大兄皇子。しかし、その視点もまた逆転する。

一方で、中大兄皇子はつかみどころのない優しさを感じさせ、大海人皇子は得体の知れない不気味さを感じさせもする。ときに白にも黒にも転化する異父兄弟の対立も、見どころだ。また中臣鎌足は、父としての苦悩も背負うことになる。
最新第7巻では、実の子である定恵が中大兄皇子によって殺害されようとする。息子への情、主君への義のあいだに立つ鎌足は……。

華やかな劇画絵という表現がぴったりな、中村真理子のタッチも秀逸。そう、本作はドラマティックでロマンティックな劇画だ。歴史ものは苦手という人も、また新説とはあいいれないという人も、愛憎渦巻く劇画の魅力にこそ酔いしれてほしい



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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