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『十 ~忍法魔界転生~』第7巻 山田風太郎(作) せがわまさき(画) 【日刊マンガガイド】

2015/09/03


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『十 ~忍法魔界転生~』第7巻
山田風太郎(作) せがわまさき(画) 講談社 ¥619+税
(2015年8月6日発売)


ミステリ、時代小説、そして〈忍法帖〉シリーズなど様々なエンターテインメント作品を生み出した作家・山田風太郎。その山田風太郎の代表作のひとつが『魔界転生』である。
あらすじをすごくシンプルに説明すると……舞台は、三代将軍・徳川家光の治世、島原の乱が鎮圧された直後から物語は始まる。魔界転生なる秘術で甦った宮本武蔵、荒木又右衛門(あらき・またえもん)、天草四郎などの「魔界衆」と剣豪・柳生十兵衛三厳(やぎゅう・じゅうべえ・みつよし)が戦う物語である。

史実では戦ったことのない、柳生十兵衛が宮本武蔵と(あるいは荒木又右衛門と、あるいは……と)剣を交える。剣を極めたもの同士の戦いは、いったいどのようなものになるのかワクワクさせられる。
そうした普遍的なウケる要素を持つがゆえに、50年近く以前の作品である『魔界転生』(1967年刊行)が現在に至っても読み継がれ、本書を含めて何度となく映像化・マンガ化されてきたのだと思う。

さて、本書において作画を手がけるせがわまさきは、すでに以下の山田風太郎作品のコミカライズを行っている。
1.『バシリスク ~甲賀忍法帖~』(原作『甲賀忍法帖』全5巻)
2.『Y十M ~柳生忍法帖~』(原作『柳生忍法帖』全11巻)
3.『山風短』(短編「くノ一紅騎兵」「剣鬼喇嘛仏」「青春探偵団」「忍法枯葉塔九郎」を各々マンガ化。全4巻)

せがわまさきは、TVアニメ化もされた「1」により2004年に第28回講談社漫画賞を受賞しており、山田風太郎の作品を料理するうえでは、最適な手練れである。本書は、そのせがわまさきが山田風太郎の代表作『魔界転生』とがっぷり四つに組んだものである。おもしろくないはずはない。

せがわまさきが描く転生した剣豪たちのビジュアルは、魔界の者と呼ぶにふさわしいものとなっている。
特に十兵衛の父親である柳生但馬守宗矩(やぎゅう・たじまのかみ・むねのり)などは転生前と後の変貌ぶりはすさまじく、生前にどれだけ本心を押さえこんでいたのかがしのばれる(転生後は、家や役職から解放され、一挙に奔放になっている。髪形もツインテールになっているし)。

ところで、冒頭で本書は「『魔界衆』と剣豪・柳生十兵衛が戦う」物語だと書いた。
「魔界衆」は全部で7名。田宮坊太郎(たみや・ぼうたろう)、宝蔵院胤舜(ほうぞういん・いんしゅん)、柳生如雲斎利厳(やぎゅう・じょうんさい・としとし)、天草四郎、荒木又右兵衛、柳生但馬守宗矩、宮本武蔵といった手強い相手である。超人的な力を持つ相手を、柳生十兵衛は「柳生十人衆」などの仲間の力を借りながら倒していく。
「柳生十人衆」は十兵衛の弟子だが、まともに斬り合えば瞬殺されてしまうほど、魔界衆とは力の差がある。ちょっと頼りない十人衆は、十兵衛の足を引っ張ってしまうこともあるが、ときには身を捨てて十兵衛を助ける様は感動的である。

こうした脇役たちも、じっくりと描きながらせがわは物語を進めていく。悠々と描いているがゆえに、第7巻に至っても柳生十兵衛が田宮坊太郎、宝蔵院胤舜の2人と対戦したところまでである。クライマックスは、まだまだ先だ。未読の方は今からでも充分追いつけるので、ぜひ手にとっていただきたい。

ちなみに、コミックスの巻末には登場人物についてのコラム(ライターの三澤祐の手になるもの)が付されている。
『魔界転生』の時代背景や剣豪たちの人となりが解説されていて、作品を理解するうえで非常に役に立つ。こうした心配りもうれしい。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。また「ミステリマガジン」9月号にコミック評が掲載されています。

単行本情報

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