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『レベレーション(啓示)』 第2巻 山岸凉子 【日刊マンガガイド】

2017/01/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『レベレーション(啓示)』


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『レベレーション(啓示)』 第2巻
山岸凉子 講談社 ¥600+税
(2016年12月22日発売)


神の声を聞いた名もなき少女が救国の英雄として人心を集め、高貴な者からも認められる。
これは男女問わずだれもがワクワクしながら読み進められるストーリーなのではないか。
それが、実在した数少ない女性偉人でもあるジャンヌ・ダルクのことなら、なおさらだ。

百年戦争で疲弊したフランスの片田舎、故郷のドンレミ村を出て、ヴォークルールの守衛官・ボードリクールから兵を借り、オルレアンを目指すジャンヌ。
かの有名な断髪のシーンもあり、男装の麗人として兵士たちを率いてゆく。
それでもジャンヌは謙虚な姿勢を忘れず、また親戚の子の誕生を心から喜ぶ、普通の少女らしい一面も見せる。

ここで、ジャンヌが助けようとしている王太子シャルル(のちのシャルル7世)がクローズアップされる。美男とはいいがたく性格は卑屈であり、酷薄そうな義母ヨランドも含めて、なんとも王にふさわしくなさそうなのだが……。
謁見したジャンヌが隠れていた彼に「光」を感じ、王といい当てる名場面も描かれる。
しかし、疑り深い(かつ、30年近く著者のファンとして容赦ない展開に翻弄され続けた)筆者としては、シャルルに駆け寄った従者のたいまつの炎に目がいってしまう。

また、ヨランドの差し金で、ジャンヌが「処女か否か」と調べられるおぞましい経験ののち、同じ名を持つ亡き姉に似た聖カトリーヌに剣で刺されて「浄化された」と感じる場面は強烈なインパクトを残す。美しい姉妹愛や優しき聖女の導きと解釈したいところだが、つい、「剣=男性性の象徴」では? との深読みにまで至る。
いや、もちろんこれはゲスの勘繰りであってほしいのだが。

ジャンヌは女性ならこうありたいというような、魅力あふれるキャラクターとして描かれている。
だからこそ、第1巻冒頭にあらわれている刑場のジャンヌを思い起こして苦しくなる。
どんな残酷などんでんがえしがあるのか、それでも彼女には救いがあるのか。

憧れの聖女の悲劇を知っているからこそ、ひとコマひとコマの細部まで、吟味せずにはいられない。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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