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4月30日は、アメリカが仏領ルイジアナを買収した日 『プリンセスと魔法のキス』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/04/30


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

4月30日は、アメリカがルイジアナを買収した日。本日読むべきマンガは……。


PRINCESStoMAHOUnoKiss_s

『プリンセスと魔法のキス コミックス』
小鷹ナヲ 講談社 ¥838+税


きょう4月30日は、アメリカがルイジアナを買収した日である。
ルイジアナとは現在のルイジアナ州ではなく、かつて北米に存在した仏領ルイジアナのことである。その地域の北限はカナダとの国境沿いにある五大湖で、南はメキシコ湾へと至る。東西はアパラチア山脈からロッキー山脈を含んでおり、現在のアメリカ中西部の大半を占める広大な地域を指す。

もともとこの地域はフランス領であった。仏王ルイ14世にちなんで「ルイジアナ」と名づけられたのだが、フレンチ・インディアン戦争でイギリスに敗北したフランスは、ミシシッピ川以東の植民地をイギリスへ割譲。さらに仏領ルイジアナをスペインへと譲り渡し、その代償としてフロリダを得た。
しかし、スペインはこの広大な土地をもてあましてしまう。赤字経営のまま維持するわけにもいかず、結局、スペインは秘密裏のうちにフランスへと仏領ルイジアナを返還した。

この当時、アメリカ大統領のトマス・ジェファーソンは、仏領ルイジアナの一都市・ニューオリンズの買収をフランスに提案していた。
しかしフランスのナポレオン1世はこの申し出に対し、仏領ルイジアナ全域の売却を持ちかけてきたのである。
そして1803年4月30日、アメリカはわずか1500万ドルという破格の値段で仏領ルイジアナを手に入れ、アメリカ合衆国の国土はおよそ2倍にも膨れあがった。

ルイジアナの名前は現在でも州名(ルイジアナ州)としてその名を残している。また、かつてトマス・ジェファーソンが欲したニューオリンズは、州最大の都市として、またジャズ発祥の地として栄えてきた。

そんなルイジアナとニューオリンズを舞台にした作品が『プリンセスと魔法のキス』である。
ディズニー映画としては初のアフリカ系アメリカ人女性を主人公にした作品として話題を呼び、小鷹ナヲの作画でコミカライズもされた。

主人公のティアナは、いわゆる伝統的なディズニー・プリンセスとは異なり、王子様のキスを夢見るのではなく、努力によって夢(レストラン経営)をかなえようとする自立心の強い女性だ。
ところが、自分のことを王子と名乗るカエルに、呪いを解いてほしいと頼まれるところから、物語が大きく動き出す。

ニューオリンズの建物は鉄製の装飾を施したバルコニーが特徴的で、アメリカというよりはヨーロッパ風だ。
フランス、スペインの植民地であった歴史が文化の面で色濃く残っており、本作でも背景の建物はニューオリンズ独特の様式で描かれる。“料理の天才”ティアナがつくるガンボ・スープはアメリカ南部の伝統的な家庭料理であり、そういったニューオリンズならではの文化的背景がストーリーを彩る。

また、ティアナの冒険を手助けするレイは、巻頭の「主要キャラクター紹介」のページで「ケイジャン蛍」と説明されている。ケイジャンとは仏領ルイジアナに移住していたフランス系の人々やその子孫のこと。登場キャラクターのバックグラウンドにもルイジアナの歴史的要因が反映されているわけだ。

なお、作中ではブードゥーの魔術がキーポイントとなる。ニューオリンズには、ハイチから渡ってきたアフリカ系住民がブードゥー教をもたらし、古くから土着の宗教として根づいている。
このようなニューオリンズ独自の文化を理解していると、本作をより深く楽しめるはずだ。

この小鷹ナヲによるマンガ版は、基本的には映画版を忠実に再現している。映画版はジャズによるミュージカル風の歌と踊りが楽しいが、マンガ版には自分のペースで読み進められる利点がある。ルイジアナとニューオリンズの風土に思いを馳せつつ、作中で提示される「望み」と「必要」の違いについて、じっくりと読み進めながら考えてみてはいかがだろうか。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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