このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

11月3日は「いいお産の日」 『私たちは繁殖している』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/11/03


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

11月3日はいいお産の日。本日読むべきマンガは……。


WATASHItachihaHanshokuShiteiru_s01

『私たちは繁殖している』 第1巻
内田春菊 ぶんか社 ¥951+税


本日は、語呂合わせで11(いい)03(お産)の日。
女性と助産師などによる「いいお産の日実行委員会」が1994年に定め、以来、育児出産にまつわるイベントを行っているそう。

その1994年に出版されてベストセラーになったのが内田春菊の『私たちは繁殖している』である。当時から著者はセクシャルな題材を扱う売れっ子漫画家でありつつ、義父から性的虐待を受けていた実体験をもとにした自伝的小説『ファザーファッカー』が話題を呼んだり、また、第一子はその時の同棲相手でなく、別の男性との子であることを公表したりと(なんと『笑っていいとも!』に出演し語っていた)、なかなかセンセーショナルな存在だった。

『私たちは繁殖している』は子育て雑誌ではなく艶笑マンガ誌「みこすり半劇場」で連載が始まり、従来の育児エッセイであまり触れられていなかった「お産」そのものを詳細に、かつユーモアもふんだんにまじえて描写したこと、また著者らしくエロスと出産を地続きとし、タイトル通り自然な営みとしてお産・育児をとらえたスタンスも斬新だった。

最初に生まれた息子1、流産や子宮外妊娠からの逆子の娘1出産、離婚・再婚を経て娘2、息子2が誕生……と、波乱万丈ななかで「繁殖」し続けた(そのすごさは本編にて)2男2女の子育ては現在も続行中だ。
「母親は苦労すべき」などの有象無象の押しつけを真っ向から論破するクールさに救われる人も多いだろう。漫画家だけでなく映画『テルマエ・ロマエ』に出演するなど女優業でも活躍する多忙ぶりのなかでも、子どもたちといっしょに試行錯誤する縫い物や料理も楽しそう。

今風にいえば毒親育ちでもある著者が、少々複雑な家庭を築きながらも、自分の子どもたちをほどよい距離で見守り、性についてもオープンに話しあう様子は、子育ての悩みを吹き飛ばしてくれるパワーにあふれている。
巻を重ねるたびに別れた相手やその家族への悪口までもがオープンになっているのは、賛否両論あるところだが、まあ、聖母である必要はないとするデモンストレーションなのか…と解釈できなくもない。

出産は痛そうだから怖い、とか、産んだら女を捨てて母親にならねばならない、などの強迫観念に悩む女性は、じつは多いのだ。
この作品が発する「産む性をもっと楽しもう」との押しつけがましくないメッセージは、この日に受け取ると、より深く響くだろう。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

  • 『私たちは繁殖している』 第1巻 Amazonで購入
  • 『私たちは繁殖している』 第1… Amazonで購入
  • 『彼のバターナイフ』 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング