日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『私に依存するのはやめてください』
『私に依存するのはやめてください』 第1巻
内田春菊 竹書房 ¥1,000+税
(2016年6月7日発売)
内田春菊がこれまでの人生で関わり、悩まされた「依存者」15人を時系列で紹介した1冊。
例の義父から、恋人、友人、仕事関係者、元夫……まで、男女問わず、暴力と借金とギャンブルと噓にまみれたエピソードの数々に、世のなかにはこんなクズがいっぱい潜んでいるのか……とゾッとせずにいられない。
だいたい「私ってナイーブでかわいそう」アピールしてくる人ほど、人を傷つけることに鈍感で人の好意につけこみ暴走してくるものだが、本作の「依存者」たちは、まさにそんな感じ。
決して「大悪人」ではない、むしろそこらへんに転がっていそうな「小者」なだけに、読みながら、こういうヤツいるいる!と共感できるリアリティがある。
そして、じつはそういう人ほど、こちらが反撃すると急に被害者ぶったり、まったく悪意がないためのれんに腕押しで終わることも多く、やっかい極まりないのだ。
実際、春菊さんもあれこれ対策を試みたうえに、消耗しきって、そっと縁を切るケースが多かったようで、こういうモンスターには「防御こそ最大の攻撃なり」じゃないが「関わらないこと」がいちばんだな~と痛感してしまう。
まあ、これだけ痛い目にあって学んでいるはずの春菊さんが現在もモンスターに悩まされているということは、じつは「共依存」なのか、あるいは強烈な光は影を引き寄せてしまうのか……。
いずれにしても、特に女性のみなさんには人生教訓として読んでおくべき1冊かも。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69