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12月18日は上野公園の「西郷隆盛像」が公開された日 『ふしぎな少年』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/12/18


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

12月18日は上野の西郷さんがお披露目された日。本日読むべきマンガは……。


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『手塚治虫文庫全集 ふしぎな少年』
手塚治虫 講談社 ¥930+税


東京・上野公園のランドマークといえば、もちろん西郷隆盛の銅像だ。
愛犬のツンを連れて狩りに出かけていく西郷の姿は勇壮で、さすがは高村光雲の作(ツンは後藤貞行作)といったところか。
勇ましいなかにも親しみやすさもあり、平成の現在も庶民から「上野の西郷さん」と呼ばれて愛されている。

除幕式に参列した西郷夫人が「あんまり似てない」といったとかいわなかったとか、様々な都市伝説もあるが、この像が上野公園に建立され、除幕式が行われたのが明治31年12月18日のこと。
つまりきょうは「上野の西郷さんがお披露目された日」なのである。

「上野の西郷さん」が登場するマンガといえば、手塚治虫『ふしぎな少年』だ。

主人公の“サブタン”こと大西三郎は、地下道の工事現場から四次元空間へと迷いこみ、時間を止める能力を身につけてしまった。
第1話の冒頭で、サブタンが読者(子ども)に向けて四次元についての説明をするのだが、その語り口のうまさに、手塚治虫のセンス・オブ・ワンダーが感じられるだろう。

そして、四次元空間を移動するサブタンは、まさに神出鬼没。銀座の大通りを歩いていたかと思うと、次の瞬間には「上野の西郷さん」の上に移動していた。
警察とサブタンの父親が上野にかけつけると、すでにそこにサブタンの姿はない。父親は西郷像によじ登って手がかりを探ると、西郷像の背中に「これから新宿へいきます」とのメッセージが残されているのであった。
やがてサブタンは、その能力を悪用しようとする組織からつけ狙われ、騒動に巻きこまれていく。

この『ふしぎな少年』は、1961年から1年間かけてNHKで実写テレビドラマ化された。
当時はドラマ番組も生放送。サブタンが「時間よとまれ!」と叫ぶと、出演者たちがいっせいに動きを止めるのが子どもたちに大ウケし、「時間よとまれ!」は流行語になったという。

原作の最終回は「少年クラブ」が休刊となる1962年12月号に掲載された。
ラストエピソードは、某国から誤って原子力ミサイルが東京に向かって撃ちこまれてしまったところから始まる。おりしも時代はキューバ危機(1962年10月~11月)の最中。米ソの対立が激化し、歴史上、もっとも核による全面戦争に近づいた時期であり、世界中が核の恐怖におびえた時代だ。
少年向けの作品ながら、きちんと世界情勢や社会問題を織りこんでくるところが手塚治虫らしい。

ミサイル危機にくわえ、アフリカの反政府ゲリラも絡んできてこの話はどのように決着するのか?
師走の慌ただしい日々の時間をいったんとめて、物語に没頭してもらいたい。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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