『マンガ家誕生。』
手塚治虫/さいとう・たかを/石ノ森章太郎/永島慎二 ほか(著)中野晴行(編) 筑摩書房 \700+税
11月3日は文化の日である。いまやマンガは日本を代表する文化のひとつとなっているが、そのことをより周知するために、日本漫画家協会はこの日を「まんがの日」に定めた。
また、11月3日は“マンガの神様”手塚治虫と、『ゴルゴ13』などでおなじみの“劇画の巨匠"さいとう・たかをの誕生日でもある(手塚は昭和3年、さいとうは昭和11年)。神様と巨匠の生まれた日だから、なるほど「まんがの日」にふさわしい。
こんな日に読みたいのは、中野晴行の編集による『マンガ家誕生。』(ちくま文庫)だ。
本書は手塚治虫、ちばてつや、さいとう・たかを、赤塚不二夫、水野英子、石ノ森章太郎、水木しげる、永島慎二、つげ義春といったマンガ界のレジェンドたちの、漫画家デビュー直後のころを描いた自伝的エッセイ作品を選りすぐった短編集である。
のちの巨匠たちが、若かりし日、いかにしてマンガ家を志すようになったのか。彼らが青春時代に“まんが道”で燃やした“青い炎”を見ることができる。
また、「ガロ」の編集長だった長井勝一のエッセイも掲載されているので、マンガ史を紐解くには最適の一冊といえるだろう。
なかでも注目したいのが、永島慎二の「ぼくの手塚治虫先生」だ。
永島慎二といえば、漫画家の苦悩と葛藤を描いた『漫画家残酷物語』が代表作としてあげられるように、いわば「漫画家マンガ」のパイオニアである。
「ぼくの手塚治虫先生」では、そんな永島が手塚との思い出を語った作品であり、永島慎二とさいとう・たかをが連れだって富士見台の手塚プロを訪問する場面(昭和37年)が描かれる。手塚、永島、さいとうの三者が顔をつきあわせてマンガ界の状況(当時)について語る……という、マンガ史的にも貴重なシーンだ。
「まんがの日」、いつもとは趣向を変えて、マンガの歴史に目を向けてみよう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama