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長谷川哲也『セキガハラ』インタビュー前編 戦国武将×特殊能力×タイマン・バトル!? 【総力リコメンド】

2014/09/08


キャラクター誕生秘話――超個性的なキャラはこうして誕生した!

――先生の作品には個性的なキャラがたくさん出てきますね。

長谷川 『ナポレオン』に関してはね、少年画報社の編集長が「出てくる人物、みんな頭がオカシイほうがいい」という方針なんです。

――それもまた極端ですね(笑)。

長谷川 キャラ立ての一環なんですけどね。普通の人が出てきて、普通のリアクションをしても、おもしろくはないですし。

『セキガハラ』に登場する個性的なキャラクターたちの設定資料。細かく設定されている。ぜひじっくり見て、連載版のキャラとの違いを比較してみて。

『セキガハラ』に登場する個性的なキャラクターたちの設定資料。細かく設定されている。ぜひじっくり見て、連載版のキャラとの違いを比較してみて。


――では、「関ヶ原モノ」と決まった時に、誰を主人公にしようか迷いませんでした?

長谷川 まあ、家康か三成しかないですよ。でも、うーん……、今にして思えばほかの選択肢もなくはないのか。でも対決モノにするんなら、っぱり家康か三成ですよ。

主人公の石田三成。未来を予見できる能力を持ち、理想国家の実現にまい進する。が……とにかく敵が多いし災難続きの苦労人。

主人公の石田三成。未来を予見できる能力を持ち、理想国家の実現にまい進する。が……とにかく敵が多いし災難続きの苦労人。


――いちばん思い入れがあるのは?

長谷川 家康です。健康、筋肉馬鹿。

――もともと家康は、自分で薬を調合していたとの逸話があるように、健康オタクでしたからね。

長谷川 そうそう、そこは史実からの着想。あと家康は、鉄人28号[注9]のイメージです。

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口癖は「筋肉!健康!」のムキムキマッチョな家康公。無敵な感じと前身のシルエットが鉄人28号に似ている!?

口癖は「筋肉!健康!」のムキムキマッチョな家康公。無敵な感じと前身のシルエットが鉄人28号に似ている!?


――横山光輝先生[注10]の。

長谷川 小さい頃は『鉄人28号』が好きで、よくマネして描いてたんです。

――虎退治で有名な加藤清正[注11]が、本物の虎になるとは思いもよりませんでした。

虎に喰われ、別名の虎之助そのままに本物の虎になってしまった清正。手触りのよい毛並みがすてき。上にまたがるのは爆音ボイスが能力の福島正則。ふんどし!

虎に喰われ、別名の虎之助そのままに本物の虎になってしまった清正。手触りのよい毛並みがすてき。上にまたがるのは爆音ボイスが能力の福島正則。ふんどし!


長谷川 あれはね、フィリップ・K・ディックの『輪廻の豚』がモデルになっているんです。宇宙船のなかに非常食として豚を持ち込んだら、その豚が人語を話せることがわかる。それでも船長は豚を食べちゃうんだけど、食べ終わったあと、豚が話していた内容を船長が語り出す……という短編があるんです。それと『山月記』[注12]ですね。

――中島敦[注13]の、虎になる話。

長谷川 僕は中島敦が好きで、『名人伝』[注14]をマンガ化しようとしたことがあるくらいですから。

――いちばん驚いたのはコレ。黒田長政[注15]が「パパ」と呼んでいるから、「この植物みたいなものが黒田官兵衛[注16]なのか!?」とビックリしました。

長谷川 そのへんのことは3巻で明らかになります。これはね、アフリカのどこかの部族の精霊……なのかな? 装飾を立体化したんですよ。

とにかくデカいし、もはや人間かもあやしい黒田官兵衛。これを「パパ」と呼べる長政はある意味すごくいい息子。

とにかくデカいし、もはや人間かもあやしい黒田官兵衛。これを「パパ」と呼べる長政はある意味すごくいい息子。


――なんというか、アイデアの幅が広いですね! 引き出しが多いように感じます。

長谷川 ただ、最近は忙しくて、あまり引き出しにモノを入れていないんです。1日に14時間もマンガを描いていたら、映画を見に行くこともできないですよ。怪獣が大好きなのに、まだ『パシフィック・リム』も『ゴジラ(2014)』も見てないくらいだから。そこが不安で……。

――そうなんですか? 最近、ラノベを読んでいるそうじゃないですか。

長谷川 ……それはどこから聞いたのかな(笑)?

――先生、ご自分のホームページに書かれているじゃないですか。

長谷川 そっか。去年くらいから読み始めたんです。

――きっかけは?

長谷川 ネットラジオのザ・ノイジーズ[注17]という人たちが、僕のマンガをすごくプッシュしてくれてるんですよ。でね、彼らがいい年をしているのに、ラノベやアニメについて熱く語っているんです。読む前は馬鹿にしていたんだけど、「どれどれ」と読んでみたら……「なるほど、これか!」「俺はこれを求めていたのかもしれない!」と。

――わかったんですか(笑)。

長谷川 わかった。自分を発見した!

――発見しましたか。

長谷川 それでね、少年画報社の編集長に「ラブコメを描かせろ」って直訴したの。

――え、『ナポレオン』を終えて?

長谷川 そうそう。そうしたらすごい拒否られた!

――それはそうでしょうよ、長谷川先生の描くラブコメは読んでみたいですけど(笑)。

長谷川 まずラノベを書いて、自分で挿絵も描いて、どっかの出版社で賞を取ったらマンガで描かせてやるよ、と言われたんです。

――ハードル高いな(笑)。

長谷川 全然ワガママがとおらない!

ラノベについても熱く語る長谷川先生。その頭のなかはワンダーランド。ラブコメ期待してます!

ラノベについても熱く語る長谷川先生。その頭のなかはワンダーランド。ラブコメ期待してます!


――まあ、ラノベは読みやすくていいですよね。

長谷川 読んでいて気持ちがいい。あと、一発芸みたいな感覚がある。

――たしかに「萌え大喜利」みたいな側面はありますね。

長谷川 シチュエーションを用意して「こういうの、どうですか?」みたいな。「こんなハーレム、どうでしょう?」とかね。

――アニメもご覧になるんですよね?

長谷川 うん、『一週間フレンズ。』[注18]よかったですよ。すごく語りたい(笑)。ラノベとか美少女アニメって、どうやって書いているんだろうなぁ。四六時中、美少女に告白されたらどうしようとかシミュレーションをしているのだろうか。

やわらかいタッチと切ないストーリーが受けスマッシュヒットとなったアニメ『一週間フレンズ。』。コミックも累計100万部を突破するほどの大人気。

やわらかいタッチと切ないストーリーが受けスマッシュヒットとなったアニメ『一週間フレンズ。』。コミックも累計100万部を突破するほどの大人気。

――マンガを描く回路とは違うんですかね?

長谷川 いや、童貞回路は一緒じゃないかな。

――童貞回路!

長谷川 童貞が想像力の源だと思いますよ。

――哲夫(笑い飯)さんとの対談[注19]で、「マンガを描く原点はエロだ」とおっしゃってましたよね。

長谷川 やっぱりほら、僕が若い頃は今と違ってエロを手に入れにくい時代だったから。自分で絵を描けると、オカズを作れるわけですよ。

――どういうの描いてたんですか?

長谷川 僕はいたって普通ですよ、ノーマル。あの、女の子が……っていうかコレ載せるの?(笑)

――「載せるな」と言うならカットしますよ(笑)

長谷川 いや、いいよ別に(笑)。まあ、あの、階段の手すりにまたがって、女の子が感じているような絵を……。

――たしかにノーマルですね。

長谷川 でしょ? 友だちにね、『リボンの騎士』(手塚治虫)のサファイア姫[注20]が全裸でハーレーダビッドソンに乗っているのを描いたヤツがいて……。

――すげえ!

長谷川 「こいつには勝てない!」って思いましたよ。だってハーレーダビッドソンですよ、武尊コンツェルンの御曹司かよ[注21]

――『俺の空』(本宮ひろ志)[注22]ですね。

長谷川 そういうトンデモないヤツの話を聞くと、「あぁ、俺って普通だなぁ」って思いますよ。このへんの発想に、男の器が表れるような気がする。

――女の子を描くのはお好きで?

長谷川 うん

――『セキガハラ』に出てくる女の子、かわいいですよね。

長谷川 がんばりましたから(笑)。女キャラがかわいくないと言われ続けてン十年。49歳をすぎて、急に女の子を描こうと思ったわけですよ。

――3巻から満姫[注23]が出てくるんでしたっけ?

長谷川 そうです。淀の方[注24]が物語に出てこなくなるので、女キャラがいなくなってしまうから。それで、淀の方が色気のあるタイプだったから、全然タイプの違うロリ美少女にしよう、と決めました。

虎(加藤清正)をも惑わせる魔性の美女、淀の方(巨乳)と、黒髪・前髪ぱっつん・姫カットのツンデレ美少女、満姫。あなたはどっち派?

虎(加藤清正)をも惑わせる魔性の美女、淀の方(巨乳)と、黒髪・前髪ぱっつん・姫カットのツンデレ美少女、満姫。あなたはどっち派?


――このあと『セキガハラ』はどうなっちゃうんですか?

長谷川 ん?(笑)。美少女がいっぱい出てくるかもしれない。

――それはリイド社さん的にはアリなんでしょうか?

担当 まあ、マンガがおもしろければ……。

――先生、ラノベやアニメが作品にフィードバックされているじゃないですか。

長谷川 中二になる娘からは「おい、萌え豚」って呼ばれてます。

――ひどい!

薄幸の美女として名高い細川ガラシャの設定画。太眉かわいい! そしてやっぱり巨乳。登場が楽しみだ。

薄幸の美女として名高い細川ガラシャの設定画。太眉かわいい! そしてやっぱり巨乳。登場が楽しみだ。



  • 注9 漫画家・横山光輝による傑作ロボットマンガ。主人公の少年探偵、金田正太郎が巨大ロボット「鉄人28号」に搭乗し、鉄人28号を狙う悪党や犯罪組織と戦う物語。月刊少年マンガ雑誌「少年」(光文社)にて1956年から1966年まで連載された。アニメ化、特撮ドラマ化、特撮映画化が何度もされるほどの大人気作で、その後のロボットマンガに多大な影響を与えた。
  • 注10 日本を代表するマンガ界の巨匠のひとり。代表作は『三国志』『鉄人28号』『魔法使いサリー』『バビル2世』など多数。ロボットものや魔法少女ものの先駆者ともいわれ、後進への影響は計り知れない。多くの作品がアニメ化され、今なお根強い人気を誇る。
  • 注11 安土桃山時代から江戸時代初期を生きた武将。肥後熊本藩の初代藩主。幼少から豊臣秀吉に仕え多くの武功をあげ「賤ヶ岳七本槍」のひとりに数えられた。猛将として名高いだけでなく治世においてもその手腕を発揮した。築城の名手としても知られる。
  • 注12 1942年に発表された小説家・中島敦の短編小説。中国の変身譚をベースにしつつも、中島独自の改変と独特の文体によりいっそう深みのある内容になっている。高校の教科書で読んだことのある人も多いはず。
  • 注13 昭和初期に活躍した小説家。代表作は『山月記』『李陵』など。気管支喘息のため33歳の若さで早逝したが、その作品は時代を超えて読み継がれている。
  • 注14 名人伝 1942年に発表された小説家・中島敦の短編小説。天下一の弓の名人を目指す主人公がついには弓の道を極め、弓そのものを忘れるというストーリー。
  • 注15 安土桃山時代から江戸時代前期に生きた武将。筑前福岡藩の初代藩主。関ヶ原の戦いでは徳川家康の東軍につき、その勝利に多大な貢献を果たした。若い頃は猪武者といわれたが、のちに武勇と知略、忠誠心をあわせ持つ名将となった。
  • 注16 戦国時代から江戸時代前期に生きた天才軍師。出家後の号をとった如水の名でも知られる。現在放送中のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」でもおなじみ。豊臣秀吉の天下取りに大きく貢献したが、天下統一後は秀吉に遠ざけられ、関ヶ原の戦いでは徳川家康側についた。
  • 注17  webサイト「Enter Jam」にてポッドキャストで配信しているラジオ番組。映画、アニメ、ゲーム、マンガなど、さまざまなジャンルについてのトークが繰り広げられる。長谷川先生とは不定期にイベントを開催することも。
  • 注18 「月刊ガンガンJOKER」(スクウェア・エニックス)で連載中の葉月抹茶による青春グラフィティ。アニメは2014年4月から6月まで放送された。
  • 注19 国内のコミック情報を配信するニュースサイト「コミックナタリー」で行われた対談。http://natalie.mu/comic/pp/sekigahara
  • 注20 手塚治虫の少女マンガ『リボンの騎士』の主人公。美しいお姫様が「男装の麗人」として悪党と戦う姿は非常に斬新であった。サファイア姫のモデルは手塚が大ファンであった宝塚歌劇団の淡島千景。
  • 注21 本宮ひろ志のマンガ『俺の空』に登場する主人公・安田一平のライバル、武尊善行のこと。武尊コンツェルンの御曹司ながらハーレーにまたがる無頼漢で欲しいものは何でも手に入れないと気がすまない人。
  • 注22 漫画家・本宮ひろ志による大ヒットマンガ。初出は集英社「週刊プレイボーイ」(1975~81年連載)。日本最大の財閥の御曹司・安田一平が人生の伴侶を見つけるための旅のなかで成長していく姿を描く。長谷川先生いわく「いいエロマンガでした」とのこと。2011年から「ビジネスジャンプ」(集英社)にて続編の『俺の空 刑事編』の連載が開始されたが、同年に同誌の休刊が決定。休刊号では、東京地検特捜部の検察官となった武尊善行が、国会で「えいえいおぉおーーっ」と叫びながら拳銃を乱射。その次ページでは、本宮邸で集英社の担当編集者が「本当にこれで出すんスか な…なんか…」「メチャクチャなんスけど……」と言い、作画中の本宮ひろ志が「ビジネスジャンプ」休刊に苦言を呈すという、近年まれに見るメタ的超展開に。つねに世間を挑発し続ける、本宮らしい作品(その後、新創刊の「グランドジャンプ」に移行して連載継続。現在は終了)。
  • 注23 加賀藩主・前田利長の娘で唯一の実子。
  • 注24 戦国時代から江戸時代初期に生きた女性。母は織田信長の妹・市、父は近江の戦国武将・浅井長政。豊臣秀吉は父母の仇ながらその側室となり秀頼を産み、秀吉死後は秀頼の後見として豊臣家を取り仕切った。

超歴史を生み出すおどろきの秘密に迫る!後編は9月11日更新予定!

試し読みはコチラから!
特別掲載『セキガハラ』 【総力リコメンド】

取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也

単行本情報

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