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【インタビュー】大谷紀子『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』奇跡の再会!? コミックスのウラ表紙に感動の仕掛けが!

2017/08/01


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、大谷紀子先生!

『すくってごらん』が『このマンガがすごい!2015』オンナ編ランクインなど乗りに乗っている実力派・大谷紀子が次作に選んだのは、小説家・七月隆文が手がけ、累計160万部を超えた大人気小説!
20歳の男女の40日間を描いたファンタジック・ラブストーリー『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』。

2015年に本サイトでコミカライズの連載が開始。その1年後に、福士蒼汰と小松菜奈主演の映画が公開され、こちらも大ヒットを記録! 劇場で号泣する人が続出した感動の話題作。

今回、連載完結を記念して、大谷紀子先生に突撃インタビューを行いました!
物語の隅々にまでこだわった演出方法や七月先生と大谷先生の奇跡ともいえる共通点など、ここでしか聞けない話をたくさん聞けちゃいましたよ!

著者:大谷紀子

女性漫画家。

著作に『Fine』(集英社)、『浦島龍宮絵巻』(集英社)、『メランコリック』(集英社)など。本サイトにて連載していた『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が今年の5月に最終回を迎えた。

Twitter:noriko_ohtani


原作を読み終わって、すぐ京都に行きました!

――初めて原作小説を読んだ時、どんな印象を持たれましたか?

大谷 まずパラパラとめくってみた時、宝ヶ池とか知ってる地名がたくさん出てきたので驚きました。私、京都に住んでいたことがあるんです。読み始めたら、髙寿くんの通ってる大学のモデルは京都精華大学だとすぐわかったし、行ったことのある場所がどんどん登場するので読みながら映像が浮かんできて。
調べたら、原作の七月先生は京都精華大学の出身だったんですね。出てくる場所やディテールの細かさから、これ絶対に七月先生の私小説的な要素があるんじゃないかとにらみました(笑)

高寿には七月先生の私小説的な要素が!?

高寿には七月先生の私小説的な要素が!?

――担当さんは大谷先生が京都にいたことがあると知っていて依頼したんですか?

担当 いえ、知らなかったんです。コミカライズの企画を立ち上げた時、まっさきに大谷先生の絵の愛美が思い浮かんで……ぜひともお願いしたいと。

大谷 てっきり知っていて声をかけてくださったのかと思いましたよ。
土地を知っているおかげで、だれよりもこの物語の世界にすっと入れたんじゃないかと思ってます。読みながら、やっぱり最後は悲しくて泣いちゃいましたね。SF的な設定なのに、2人が過ごす日々の様子がとてもリアルに感じられて。抹茶ロールケーキを食べるとか、ささやかなシーンもていねいに描かれているからよけいに感情移入してしまったのかな。

――不思議な設定なのに、20歳の2人がつきあい始めてデートを重ね、初めて手をつなぐなどの初々しい感覚もリアルな肌触りがあって。

大谷 2人が過ごした40日間をいっしょに体感している気持ちになるんですよね。
読み終わったらすぐに宝ヶ池が見たくなりまして。
まだ、私が作画を担当すると正式に決定したわけでもないのにひとりで京都に行って、写真をいっぱい撮ってきました。

――行動が早いですね(笑)。

大谷 私、いつもそうなんですよ(笑)。
「おもしろそう!」とか心が動くと、いても立ってもいられなくなるほうで。小説に出てくるルートを順番にたどって……愛美さんが消えたのはここかなとか思いながら。髙寿の目線で歩いてましたね。そう、行ったのがちょうど桜が咲いている時期だったんです。まさに物語の冒頭といっしょ。桜が散って水面を流れていて。

出会ったばかりの髙寿と愛美、2人が言葉を交わす姿に想いを馳せ、宝ヶ池を訪れた方も多いのではないでしょうか。

出会ったばかりの髙寿と愛美、2人が言葉を交わす姿に想いを馳せ、宝ヶ池を訪れた方も多いのではないでしょうか。

――京都にはどのくらい住んでいたのでしょうか。

大谷 それが……本当のことをお話しすると、じつは私も京都精華大学に入ったんですが、入学してすぐにやめちゃったんです。
というのも授業の初日に「別冊マーガレット」でデビューが決まって、マンガに専念しようと思ったので。でも、1年半くらいは京都に住んでいました。京都国際会館駅の近くにあるローソンとなか卯でバイトしてましたね。ずっと中退したことにすごく負い目を感じてたんですけど、このコミカライズのおかげでいい思い出に変わったんですよ。描き始めてからも京都には2回行ったんですが、こういうかたちで京都精華に足を踏み入れてすごく浄化された気分になりました(笑)。

――すごい! しかも、主人公たちと同い年くらいの時期に京都に暮らしたわけですから、きっと大谷先生にも思い出のデートの場所とかあるんですよね?

大谷 いやいやいや。ずっとマンガに明けくれてましたから(笑)。


ほぼギャグはなし、直球勝負で描ききった作品

――だれもが知っているような名所は出てこないのに、不思議と京都という土地のイメージが伝わってきますね。

大谷 髙寿くんと愛美さんの特別な事情はさておいても、ずっと2人でいる濃密な恋人の雰囲気とか、カップルに対して外野がうるさくないところとかも京都っぽいのかなと思います。

――人間関係のあり方が京都っぽい?

大谷 人の恋愛に干渉しないというか。たとえば作中にも出てくるんですが、鴨川沿いには実際カップルがいっぱいいるんですよ。あの情景も京都らしさなのかなと。

多くのカップルが静かにたたずむ鴨川沿い。この情景も京都らしさのひとつ。

多くのカップルが静かにたたずむ鴨川沿い。この情景も京都らしさのひとつ。

――たしかに、あの鴨川沿いの風景は独特です。恋愛にも土地柄ってあるんですね。本作は徹底して2人だけのドラマで、脇役の出番が少ない。

大谷 画面が持つのかという不安はなかったですが、逃げ場がないというか。脇キャラで遊ぶとか、そういう部分がいっさいないですからね。

――少女マンガなら愛美さんにちょっかい出してくる男が出てきたりするところですが。

大谷 いっさいないですよね。少女マンガ出身なので、描きながら少女マンガだったらああするだろうな、こうするだろうなと思ったりはしました。ずっと2人だけに対峙しているのはなかなかしんどかったですね。そのぶん、表情が重要になってくるのでそこは力を入れました。
たとえば愛美さんは冒頭から、この始まりは終わりだと知っているわけですから、ちゃんとその感情を拾ってあげなくちゃと。

愛美さんの笑顔が印象的な一コマ。完結した今、読み返すとその笑顔の本当の意味を感じ取ることができる。

愛美さんの笑顔が印象的な一コマ。完結した今、読み返すとその笑顔の本当の意味を感じ取ることができる。

――原作の七月先生から、コミカライズに際してはどんなオーダーがありましたか?

大谷 脇役キャラにはモデルがいるので実際のビジュアルに寄せてほしいと。お友だちや先生のご両親の写真を見ながら描きました。似せようとがんばったら「もうちょっとマンガっぽくしていいよ」といってくださったのでデフォルメはしています(笑)。髙寿くんの親友の上山くんのモデルの方には実際にお会いしたんです。
レストランを経営されていて、ごちそうになりました。

素敵な脇役キャラたちにも1人ひとり実在するモデルがいて、今を生きていることを思うと感慨深い。

素敵な脇役キャラたちにも1人ひとり実在するモデルがいて、今を生きていることを思うと感慨深い。

――そういえば上山くん、作中でちゃんと「料理人になる」っていってますね!
モデルになった方々もマンガを読んでいるんでしょうね。

大谷 責任重大です(笑)。動物園のシーンで出てきた髙寿くんの同級生たちも、みんな七月先生の大学時代のお友だちで。ちょこっとしか出てこないんですがけっこう気に入っています。

この動物園でワイワイ遊ぶ同級生たちも、七月先生の大学時代のお友だちがモデルです。 なかでも大谷先生のお気に入りは、このメガネの子。

この動物園でワイワイ遊ぶ同級生たちも、七月先生の大学時代のお友だちがモデルです。
なかでも大谷先生のお気に入りは、このメガネの子。

――愛美さんと高寿くんについては?

大谷 ビジュアルに関してはほとんど注文がなかったです。小説の表紙のすばらしいイラストで、もう方向性は決まってましたしね。ただ、高寿くんの描写については、ソフトで情けない優柔不断な男子みたいに誤解されないように描いてほしいと。

――愛美ちゃんが完璧な女の子なので、マンガ的なバランスでは高寿くんをもじもじした男の子に描く……というのはありそうです。

大谷 初期の頃にはギャグは極力使わないでほしいといわれました。

――ほとんどギャグ絵がない作品ですよね。

大谷 私、ホントはギャグ絵がめっちゃ好きで、自分のオリジナルだったらかなり描くんですけど。

――現代のマンガでは必須の技術ですよね。

大谷 息抜きのコマなんですよね。「ここおもしろいとこですよ」っていってる。今回は、徹底して排除して描きました。そういえば初代の担当さんに「あまりギャグ絵に逃げるな」といわれたことを思い出しましたね。もちろん息抜きはあっていいと思うんですが、バランスの問題で。
描きながら、しばらくギャグ絵を多用しすぎていたかなと思いましたね。


単行本の装丁にもすみずみまでドラマティックな演出が

――小説を最初に読んだ時、この設定がすぐには理解できなかったんですが、大谷先生はいかがでしたか?

大谷 けっこうわからなかったです(笑)。ちょいちょい勘違いしてましたね、アシさんがちゃんと理解してくれてたので助けられました。愛美さんが「髪を切った」という“次の日”から髪がロングになっていないといけないのに短く描いちゃって。アシさんに指摘されて描き直しました。

――読む側からすると、そこはマンガだと一目瞭然で感覚的にわかるメリットがありますよね。そういえば2人の時間軸が図説で描いてあるところ、すごくわかりやすかったです。ムードをこわさずにさりげなく解説できるのもマンガならではですね。

複雑な説明も可視化して、自然に解説できるのはマンガならではの表現。

複雑な説明も可視化して、自然に解説できるのはマンガならではの表現。

大谷 よかったです(笑)。よりわかりやすくできるのがマンガの強みでもあり、一方で多くを語りすぎてしまう場合もあるから気をつけなきゃいけないと思っていました。でも、振り返るとほぼ小説の通りに描いていて、まったく省略してるところはないんですよね。というか、省略できるところがひとつもない小説なんですが。

――1日1日の積み重ね、全部のシーンが大事ですからね。

大谷 抹茶ロールケーキを食べるとか、そういうささやかなところがすごく重要なんですよ。
自分のさじ加減でどこかのシーンを削るなんてやっちゃいけない小説だと思います。3巻で描かせていただけて本当によかった!

抹茶ロールを食べてじたばたする愛美さんがとてもかわいい! こうした何気ない日常の風景がとても大事。

抹茶ロールを食べてじたばたする愛美さんがとてもかわいい! こうした何気ない日常の風景がとても大事。

――3巻という長さは最初から決まっていたんですか?

担当 はい。じつは、それを見越して装丁にもいろいろ仕掛けがあるんです。
裏表紙を1巻から3巻まで並べると、1枚絵になるんです。1巻にいる愛美と3巻にいる高寿が3巻並べるとつながるという……。デザイナーさんが考えてくださって。

コミックスのウラ表紙を並べると絵がつながり、宝ヶ池で再会する高寿と愛美が……!

コミックスのウラ表紙を並べると絵がつながり、宝ヶ池で再会する高寿と愛美が……!

――あ、これは気がつかなかったです。すばらしい……! カバー下はチェックしたんですが。

担当 カバー下は、1巻は10歳の高寿がメイン。2巻は愛美が10歳で。そして3巻は20歳の2人。

大谷 色にも意味があって。1巻は赤1色、2巻は青1色。3巻は、赤と青がまじりあった紫を使っているんです。

――そこまでこだわってドラマティックな演出をされたとは!

大谷 デザインには七月先生もいろいろとアイディアを出してくださいました。

取材・構成:粟生こずえ

\『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』最新第3巻は現在好評発売中!/ bokuasu_s03

『このマンガがすごい!comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 第3巻
七月隆文(作) 大谷紀子(画) 宝島社 ¥640+税
(2017年7月12日発売)

■次回予告

次回のインタビューでは、大谷先生のお気に入りのシーンなど作中のお話や単行本でしか読めない描き下ろしの第0話のことについてうかがっていきます。
また気になる大谷先生の次回作の情報も明らかに……!?
インタビュー第2弾は、8月8日(火)公開予定です! お楽しみに!

なお、大谷先生の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は現在「このマンガがすごい!WEB」で第1話から第3話までを絶賛公開中だ!
ちょっとでも気になった方はコチラをチェック!!

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