このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

『このマンガがすごい!comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 第3巻 七月隆文(作) 大谷紀子(画) 【日刊マンガガイド】

2017/07/12


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

  
bokuasu_s03

『このマンガがすごい!comics ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 第3巻
七月隆文(作) 大谷紀子(画) 宝島社 ¥640+税
(2017年7月12日発売)


福士蒼汰と小松菜奈のW主演による映画版で、ご存じの人も多いはず。
2014年8月の刊行以来、読書メーター「恋愛小説のおすすめランキング」で長らく1位をキープするなど、10~20代女子を中心に絶大な支持を集めた七月隆文による大ヒット小説『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』のコミカライズの完結巻。

京都の美大に通う20歳の学生・南山高寿は、電車のなかである女性・福寿愛美を見た瞬間、恋に落ちる。
勇気を振り絞って声を掛けるも連絡先を聞き忘れて落ちこむ高寿だったが、なんと翌日、スケッチに出掛けた動物園で愛美と再会。
なんとか初デートをとりつけ、順調に愛を深めあってゆく2人だったが、じつは愛美はある秘密を抱えていた――。

“異なる次元に生きる男女の30日限定の運命の恋”という“恋愛×SF”な設定は、最近では『君の名は』『orange』、古典的なところでは手塚治虫『火の鳥』や藤子・F・不二雄のSF短編などが思い出される。

壮大な時間の輪廻を超えて出会った運命の人なのに、ずっといっしょにいることはできない。
そんなベタではあるが、これ以上ないドラマチックなシチュエーションが本作の何よりの魅力なのだが、さらに本作では2人のいる世界が時間が逆に流れているため、2人の時間を真には積み重ねることができず、最後の別れすら共有することができない――という設定が切なすぎる!

止められない時間のなかで、苦悩しながらも運命を受け入れ、今この瞬間を胸に刻みながら、2人がそれぞれの“別れ”へと旅立ってゆく最終話は、恋愛や青春の終焉を象徴する感じで、おもわずジ~ン。

恋愛や青春真っただなかの人はもちろん、そんな季節をとっくにすぎた人も沁みるSFラブストーリーだ。
高寿が京都の美大に通っている――という設定から、作中のあちこちに京都の名所が登場するなど、聖地巡礼も楽しい本作。
ラストシーンの余韻に浸るべく、今すぐ叡山電鉄に乗って、宝ケ池に行きたくなる!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

  • 『このマンガがすごい!comics… Amazonで購入
  • 『このマンガがすごい!comics… Amazonで購入
  • 『このマンガがすごい!comics… Amazonで購入
  • 『ぼくは明日、昨日のきみとデ… Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング