日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『まんが 新白河原人 ウーパ!』
『まんが 新白河原人 ウーパ!』第1巻
守村大 講談社 ¥570+税
(2015年8月21日発売)
『あいしてる』、『考える犬』、『パラダイス』などで知られる守村大、ひさしぶりのコミックスが刊行だ。
さて、その間作者がどうしていたか……は、イラストエッセイ『新白河原人』の読者の方はよくご存じのはず。
本作は、『新白河原人』に綴られた、いちマンガ家の正真正銘「独力」による自給自足ライフのマンガバージョンである。
2005年、連載作品を終了させたタイミングで、ふと「モノカネにふりまわされず、未開の山で暮らしたい」と思いをめぐらせた作者。だれもが一度くらい夢想はしても、大方は憧れに終わるもの。しかし、この無謀な思いつきを実行に移し、自力で家まで建ててしまうとは!!
都会住まいの人間がいわゆる田舎暮らしにシフトするだけでもじゅうぶんたいへんなのだが、彼のケースはさらにその上を行く。
なにしろ福島に買った東京ドーム1個分の土地は、まんま「山」。そびえ立つ木々を切り倒し、深く張った根株を引っこ抜き、傾斜をならして整地するところから始めなければならないのだ。
それは「田舎暮らし」レベルではなく、まさに原始人の生活。
マンガを描きながらの片手間でできることではないので、できるだけ低予算を心がけ、しかも業者の手は入れずにたったひとりで格闘する日々。読者目線でも「それはさすがに無理でしょ」と心配になってしまうこともある。
しかし、知恵と工夫と情熱でなんとかしていく様に心が沸き立って仕方ない。
守村先生を応援しつつも、現実的なツッコミを的確に入れる奥様“ミキちゃん”もじつに魅力的。
誰にでもできることではないけれど、守村先生とて、もとはまったくのDIY素人。人間の底力に心打たれる、現代の冒険ノンフィクションである。
そんな「田舎ぐらし」が気になった方はコチラ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」