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こうの史代先生『この世界の片隅に』インタビュー  ネタバレ御免! 読者を震撼させた連載第33回「20年6月」の創作秘話に迫る!

2015/05/02


クラウドファンディングサービスの「片渕須直監督による『この世界の片隅に』のアニメ映画化を応援」プロジェクトが絶好調!(なんと開始約1週間で2000万円に到達!)
先日公開された『この世界の片隅に』の原作者・こうの史代先生のインタビュー記事もたいへん好評でした。ということで、もっとこうの史代先生のお話が聞きたいみなさんのために、前回のインタビュー記事に載せられなかった、作品の根幹にかかわる重要なお話を公開しちゃいます。

重大なネタバレが含まれているので、マンガを未読の方は、まず先に読んでから本記事をお楽しみください!

こうの史代

1968年、広島県出身。1995年に『街角だより』でデビュー。
2004年、『夕凪の街 桜の国』が第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。同作は2008年に実写映画化された。主な著作に『長い道』『ぴっぴら帳』『こっこさん』『ぼおるぺん古事記』など。
『この世界の片隅に』は2007~09年にかけ「漫画アクション」(双葉社)に連載され、第13回メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、「THE BEST MANGA2010 このマンガを読め!」第1位、「ダ・カーポ特別編集 最高の本!2010」マンガ部門第1位を獲得した。

「20年6月」にすずを襲った悲劇……!


――前回のインタビュー記事では、劇場アニメ化への想いや、『この世界の片隅に』誕生秘話についてお話いただきました。今回は、多くの読者が息をのんだ“あの”できごとついておうかがいします。「20年6月」(『この世界の片隅に』後編収録)ですずさんの右手がなくなってから、背景を左手で描いていますよね。その後、なくなった右手が描き始めてまたキレイになるという構成は、最初から決まっていたんですか?

右手を失ったすずの心の歪みがあらわれたような背景の微妙な歪み。これは先生が左手で描いているためだったとは!

右手を失ったすずの心の歪みがあらわれたような背景の微妙な歪み。これは先生が左手で描いているためだったとは!

こうの 途中ぐらいから決めました。右手がなくなるのは最初から決めてたんですが、どうやって終わらすかまではあんまり考えていなかったです。「しあわせの手紙」を1年ぐらい机の引き出しに入れておいて、こうでもないああでもないと少しずつ描き直しながら、終盤に向けて話を作っていきましたね。

最終回に登場する「しあわせの手紙」。「いま此れを読んだ貴方は死にます」という衝撃的な言葉が、ここまでマンガを読んだ読者の心を締めつける。

最終回に登場する「しあわせの手紙」。「いま此れを読んだ貴方は死にます」という衝撃的な言葉が、ここまでマンガを読んだ読者の心を締めつける。

――ゴールを見えてやってらした?

こうの 追体験というんでしょうか、同じ時間をかけて自分も同じ気持ちを体験しないとつかめないというのがあったんですね。左手でずっと描いていて渋い顔をされ続けましたけど。でも、すでに締め切りも遅れまくっていたし、「次」はないな、と。でも背景だけですしね、人物はちゃんと右手で描いてますし。背景はどうせ誰も見てないですからね(笑)。

――そんなことないですよ! 勢いよく読んでたのでじつは最初は気づかなかったんですけど、最後に「あれっなんか違う!!」と思い、「どこからなんだろう」って読み返していって、はっと気づきました。

こうの この手がなくなる回は、人物以外下描きも全部左手なんです。そこから先の回は下描きは右手で、ペン入れは左手で。ずっとやり続けると、なにを描いてるかわからなくなるので。

――マンガならではの表現ですよね。

こうの そうですね。この回のために、1回目から意識してすずさんの右手だけのコマを描いてましたね。なので右手だけのアップがわりと多いと思います。

注意して読み返すとスケッチするすずの右手のコマがたしかに多くある。右手がなくなったすずの喪失感を読者は共有する。

注意して読み返すとスケッチするすずの右手のコマがたしかに多くある。右手がなくなったすずの喪失感を読者は共有する。


――『この世界』は誰が生きるか死ぬかではなく、「どう生きていくのか」「どうつないでいくのか」を描くところが、戦争ものだけど“戦争生活もの”なんじゃないかと思います。

こうの 我々が出会うことのできる人は、戦災を生き延びた人なので、彼らに対する敬意を表したい。生き延びたことに対する感謝をあらわしたいと思って描きました。そこが伝わるとうれしいです。

平和な時代に生きていると忘れがちな日常や周囲の人のありがたみ。『この世界』は、読後感がとてもさわやかなのも印象的。

平和な時代に生きていると忘れがちな日常や周囲の人のありがたみ。『この世界』は、読後感がとてもさわやかなのも印象的。


こうの史代先生、ありがとうございました!!


単行本情報

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