終戦直後の「焼け跡」感

――では、バディものをやるにあたって、どうして舞台を戦中～終戦直後に設定したのでしょうか？

山田　けっこう単純で、昭和ものの物語の近年の流行が高度成長期と太平洋戦争で、その間がないんです。なので、だれもやらないならやっちゃおうと。

第二話の扉絵。焼け跡となった街に立つ川島と黒田。『あれよ星屑』の扉絵は、物語性を感じさせるものが多い。

――もともと興味があったんですか？

山田　今はどうか知りませんが、僕が小学生の時は学校の図書室に毎日新聞社が出している『一億人の昭和史』という報道写真シリーズがありまして。そういうのを眺めるのが好きだったんですね。で、古本買ったりして。

――じゃあ、本作を描くために資料を集めたわけではなく、もともと好きで集めていたんですね？

山田　そうです。せっかくあるんだから、そろそろ作品に活かさないとな、と思って。

――先ほど古い日本映画がお好きだとおっしゃいましたが、どの時代のものでしょうか？

山田　50～60年代の日本映画が好きで。その頃に作られた戦争ものって、実際に戦地から帰った人たちが作っているわけですから、その人たちが体験的に見知っているものが映画に出てくるわけです。

普段はトラブルメーカーの黒田だが、ときには川島を背負うことも。互いに支え合う2人の関係性が『あれよ星屑』の魅力のひとつ！

――『あれよ星屑」というタイトルはどういうところからイメージしましたか？

山田　70年代に永六輔[注7]、野坂昭如[注8]、小沢昭一[注9]の3人が「中年御三家」[注10]と名乗って歌手活動をしていた時期があるんですけど、彼らの背負っている「焼け跡」感というか、「戦中・戦後」感が、僕はとても好きで。それこそ野坂昭如さんは焼け跡闇市派作家と呼ばれていたわけで。小沢昭一さんは何枚かレコードを出しているんですけど、そのなかに「アレ野垂れ死に」というタイトルの歌があったりして。

――そのへんの言葉や歌詞のセンスが、今のタイトルの源流にあるんですね。

数々のタイトル案たち。

――小沢昭一さんは、晩年はラジオパーソナリティとしてのイメージが強いですね。

山田　それはもちろんですが、僕は役者としての小沢昭一が大好きでして。50年代に『フランキー・ブーチャンのあゝ軍艦旗』[注11]という、フランキー堺[注12]と市村俊幸がコンビの映画シリーズがあるんですけど、それに小沢さんは上官役で出演しています。それがものすごくトンがった芝居をするんですよ。ラジオのイメージからはちょっと想像できないぐらいスピード感のある演技ですよ。ああいう感じをマンガで出せればいいんだけど。