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山田参助『あれよ星屑』インタビュー 「バディもの」の“萌え”を男の手に取り返せ!

2015/07/07


バディものにおける萌え要素を男の手に取り戻せ!

――では「バディものをやる」というところから、川島徳太郎(班長)と黒田門松が生まれてきたわけですね。

山田 二枚目と三枚目の組み合わせは、好きなんですよ。二枚目が2人並んでるのはどうもグッとこない。

二枚目と三枚目、どちらか片方だけじゃバディものは成り立たない!

二枚目と三枚目、どちらか片方だけじゃバディものは成り立たない!


――2人とも二枚目だとBLになっちゃう?

山田 男性のためのエンターテイメントでは、そこは絶対条件ではないので。

――女性のBL作家が優れている点は、どこでしょうか?

山田 BLは、そうとう広大な世界なので、総括はできませんが、雁須磨子さんの描かれるBLの、男がくよくよした感じとか好きですね。
女性が、男性のためのエンターテイメントに萌える、男の友情ものに萌えるというのが、今はもうフツーのことですが、男が男の友情もに熱くなるのが、即、同性愛文脈に帰結する可能性に男性が尻込みしているように感じています。今や、女の人の方が男の友情を情熱を持って描いているので「男もがんばらなくては」と思うんです。
「男の友情萌えを男の手に再び取り戻せ!」といえば、言いすぎかも知れませんが。

――表現的にはどうですか? BLは耽美的ですよね。

山田 僕はもともと「さぶ」[注6]という月刊のゲイ雑誌でデビューしたんですが、ゲイマンガの絵は、汚せば汚すほど、絵として成立しやすいんですよ。ヒゲやすね毛は便利なもので、画面を黒くできるし、身体の立体感が出せる。

黒田の全身を覆う毛にも、立体感を出すという役割があったのだ。

黒田の全身を覆う毛にも、立体感を出すという役割があったのだ。


山田 女性作家の表現って、視点のどこにピントを合わせて、どこに合わせないか。そこが男性作家とはまったく違う。ある部分はすごく写実的なのに、別のある部分はすごく印象派であったりする。

――同じ著者の、同じ一枚のイラストのなかに混在するんですね。

山田 それが「私にはこう見えているのだ」という説明になるわけです。独自フィルターがあるのですね。そこにまた新鮮な驚きがある。

――たとえば?

山田 近年の男性の髪型って、ファッションフォトで見ても、あまり格好よいとは僕には思えないことが多くて。無造作ヘアというか、頭頂からアホ毛が出ていて、それで細身のスーツを着ていて、身体を小さく、頭を大きく見せるシルエット。僕は「これをどうかっこいいと思えばいいかわからないぞ」と途方にくれるわけです。だけど、女性が描いたイラストで見ると、うまくまとまっている。実写では格好いいとは思えないものが、絵ではうまくいっているので、そこでまた女性のフィルターに対する信頼感が増すんです。そんな「女性作家フィルター」のマジックに対する畏敬の念が大いあります。

女性作家が持つ独自の視点について語る山田先生。言葉にも力がこもる。

女性作家が持つ独自の視点について語る山田先生。言葉にも力がこもる。


――フィルターの独自性が、作家性や個性を意味する、と。何をカットして、何を残すか。

山田 そうそう。「肯定的に見るとこうなるんだぁ」という、肯定マジック。

――でも『あれよ星屑』の登場人物は、山田先生というフィルターを通して、世に出てきているわけじゃないですか。

山田 さてどうでしょう。僕の絵にはそういったマジックは、起きてんのかな。けっこう愚直に描いてるんで……。あ、でも、絵描きとしてのフェチポイントは、ほかの人と違うところがあるかもしれまれせん。

――どこでしょうか?

山田 もみあげの幅とか。けっこう考えるんですよ、太さの幅を。(2巻カバーの黒田門松を指さして)このぐらい太いのを描く人は、あんまりいないんじゃないかな。たいていマンガの絵で、もみあげは雑に扱かわれてますから。もみあげと生え際のラインに関しては、強いこだわりがあります。

たかがもみあげの幅、されどもみあげの幅。山田先生の強いこだわりがあるのだ。

たかがもみあげの幅、されどもみあげの幅。山田先生の強いこだわりがあるのだ。


――もみあげですか。

山田 もみあげです。キャラクターデザインはそこで決まる。


  • 注6 「さぶ」 サン出版が発行していた(1974〜2002年)ゲイ雑誌。この雑誌に掲載された山田参助先生の作品は、『若さでムンムン』(太田出版)に収録されている。

単行本情報

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