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『ミュータント タートルズ』第1巻 ケビン・イーストマン/トム・ワルツ(作) ダン・ダンカン(画) 中沢俊介(訳) 【日刊マンガガイド】

2015/09/02


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『ミュータント タートルズ』第1巻
ケビン・イーストマン/トム・ワルツ(作) ダン・ダンカン(画) 中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション ¥2,000+税
(2015年7月29日発売)


マーベル原作のアメコミ映画の大ヒットのおかげもあって、近年では日本でもアメコミの認知度はすっかり高くなった。
しかし、それでまでは日本ではなかなかアメコミ文化が根づかないと言われ、作品に触れる機会も少なく、アメコミ不遇の時代が長く続いていた。

そんななかで、唯一といっていいほどの日本国内での認知度を誇っていたアメコミ原作作品がある。
それが『TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES』=ミュータント タートルズだ。

『ミュータントタートルズ』は、2014年で生誕30周年を迎え、マイケル・ベイ製作による実写映画版が公開されたことが記憶に新しい。それ以前に製作されたテレビアニメシリーズも4作品中3作品が地上波放送され、90年代に製作された実写映画3部作も日本公開されるという、ほかのアメコミ原作では信じられない日本国内での高い露出度を誇りっている。
80年代から現在まで何度もその名を知らしめる機会があったおかげで、世代を超えた知名度を誇っているのだ。

しかし、アニメや実写映画という映像作品は日本で放送・公開されながらも、肝心の原作コミックスの翻訳となると残念ながらほとんど出版されていない。
とはいえ、これだけの認知度を誇る作品だからこそ、アメコミ版を読んでみたいと思うファンも多いはず。

そんなタイミングに合わせるようにリリースとなったのが本作。
原作コミックスに関しては、84年にケビン・イーストマンとピーター・レアードの共作という形で小規模出版のモノクロコミックスとしてリリースされたのが原点となっているが、本作は2011年にスタートした新シリーズを翻訳している。生みの親であるケビン・イーストマンが参加し、あらためてタートルズの誕生から物語を語りなおす内容となっているのだ。

4人で1チームで行動するタートルズだが、本作はその一員であるラファエロを欠いた状態で物語をスタート。
現代世界でラファエロを探すタートルズ、記憶を失いたったひとりでニューヨークを徘徊するラファエロという2つの視点に、過去に起こったタートルズ誕生秘話がリンクした多重構成によって物語が進行していく。
オリジナルシリーズの設定や要素を取り入れながら、現代風に再構成された物語は、アニメや映画とは異なるちょっとハードなテイストであった、87年版を意識した作品に仕上がっているのだ。

さらに、今回は87年に発表された本当の原点であるコミックスの第1話も掲載。新たなオリジンと真のオリジン、2つのタートルズの物語を楽しむことができる、タートルズファン、ならびにタートルズの入門編としてはピッタリの内容となっているのだ。



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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