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『大逆転裁判』ディレクター・巧 舟氏×『福家警部補』シリーズのミステリ作家・大倉崇裕氏 スペシャル対談! お2人の“コロンボ愛”が深すぎる(!?)激アツトーク!【総力リコメンド】

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2015/07/18


大人気ゲーム『大逆転裁判 -成歩堂龍ノ介の冒険-』の発売を記念して、『大逆転裁判』ディレクター・巧 舟氏と、『福家警部補』シリーズなどで知られるミステリ作家・大倉崇裕氏の対談が実現!
先日その対談記事を公開したところ、大好評だったので、今回はあまりにも盛り上がりすぎて、前回の記事に載せきれなかった“あの”話を特別に公開しちゃいますっ。


『逆転裁判』シリーズの原点……かもしれない『刑事コロンボ』の話。
そう! お2人の深すぎる“コロンボ愛”から生まれた白熱の『刑事コロンボ』トークをお届けします。
読めば、『大逆転裁判』を含む、『逆転裁判』シリーズがもっと楽しくなること間違いなし!

ゲームデザイナー:巧 舟(たくみしゅう)

1971年生まれ。早稲田大学卒。
94年、カプコンに入社。以降『逆転裁判』シリーズ、『ゴーストトリック』など、主にミステリのゲームの企画・脚本・監督を手がける。

Twitter:@takumi_gt

ミステリ作家:大倉崇裕(おおくらたかひろ)

1968年、京都府生まれ。学習院大学法学部卒。

1997年、『三人目の幽霊」で第4回創元推理短編賞佳作、翌98年に『ツール&ストール」で第20回小説推理新人賞を受賞する。
著作に『三人目の幽霊』『七度狐』『白戸修の事件簿』『無法地帯』『オチケン!』『BLOOD ARM』などがあり、『福家警部補の挨拶』をはじめとする「福家警部補」シリーズのドラマ化などでも大人気を博している。

ブログ:http://d.hatena.ne.jp/Muho/
Twitter:@muho1

終わりなき“コロンボ愛”

 僕は『刑事コロンボ』[注1](以下、『コロンボ』と略す)も大好きで。大倉さんの『福家警部補』シリーズも、いろいろな人から「『コロンボ』が大好きな人が書いている」と薦められて、実際に読んでみたら、たしかにそうだなと。 koronbo_s

大倉 そもそも、『福家警部補』シリーズを書き始めたのは、『コロンボ』みたいな小説を書きたいと思ったからなんです。でも『コロンボ』のような“倒叙”[注2]って難しくて、最初から犯人がわかっていると隠すものがないんですよ。映像だとピーター・フォーク[注3]の芝居で見せるなど、やりようはあるんですが、小説だと最初から真実が全部書いてあるから、おもしろくないんです。そこからどうしたらおもしろくなるかを2、3年考えていて、あるとき、『コロンボ』のノベライズの仕事を受けたときに、編集さんからいわれたことを思い出したんです。
それは「何をやってもいいけど、コロンボの心情描写はしないでくれ」ということでした。だれにとってもコロンボが何を考えているかわからないのがいいんだと。『コロンボ』を実際観ていてもそうなんですよね。コロンボは「ウチのカミさんがね……」っていっているけど、じつは本当にカミさんがいるのかもわからない。それを思い出し、常に第三者の視点で福家(『福家警部補』シリーズの主人公)を描くことで、福家が何を考えているかわからないなかで、結果として犯罪が暴かれるという形に落ちつきました。

――巧さんはキャラクターを描く際に、何か意識していることはありますか?

 ゲームってプレイヤーが遊ぶものなので、主人公に強いキャラクター性は必要ないと、僕は考えているんです。結果として、いま大倉さんがおっしゃった『コロンボ』の話と同じ作りになっていますね。なるほどくん[注4]の過去はゲーム中で触れられないし、両親がどうなっているのかもプレイヤーはわからない。よくファンの方から、キャラクターの生年月日や血液型、好きな食べ物などを聞かれるんですけど、あえていわないようにしています。
でも、僕の心のなかがキャラクターに反映されてしまうこともあって……。ゲーム中、なるほどくんの心の声が「独り言」として表示されるのですが、その心の声は素の僕の所感を書いているんです。そうしたら、ゲームをプレイされた方々に「なるほどくんって、けっこう黒い」なんていわれて、ああ、僕の性格はけっこう黒いのかな、って(笑)。

大倉 『名探偵コナン』の主人公・コナンも、「そんなこともわからないのかよ」とかいったりして、けっこう心の声が黒いんですよね。それと共通するところがあると思います。でも、あのどす黒さはわりと好きですね。毒は毒でも品のいい毒というか、毒がまったくないとミステリって成立しないと思うんですよ。コロンボもわりと毒はあると思いますし。けっして清廉潔白ではなくて、けっこう意地悪だし。

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 ちなみに、大倉さんの好きな『コロンボ』のエピソードベスト3は?

大倉 『コロンボ』の話だと必ずその話題になりますが、私は「仮面の男」[注5]が好きですね。

 ええ!?

大倉 1番「仮面の男」、2番「殺しの序曲」[注6]で、3番目が『新・刑事コロンボ』[注7]から「だまされたコロンボ」[注8]です。

 ダメだ! すみません。ビックリするほど合わなかったです(笑)。じつは、『新・刑事コロンボ』は、あまり観ていなかったりして。

大倉 旧シリーズでいうと、3番目は「魔術師の幻想」[注9]であったり、「野望の果て」[注10]であったり、「策謀の結末」[注11]であったりしますね。大半の人があげる「別れのワイン」[注12]や「忘れられたスター」[注13]は入らないという。それでは、巧さんのベストは?

 僕は小さい頃、カセットテープで『コロンボ』の音声を録っていて、自分の部屋でそのテープ聞いていたんですけど、一番聞いたのは「逆転の構図」[注14]でした。この作品って今思うと、『コロンボ』のキーとなる要素がすべて入っている気がするんですよね。最後のドンデン返しとか、浮浪者と間違えられたりとか、コロンボエッセンスが詰まっている印象があります。人におすすめするときは「逆転の構図」ですね。

大倉 たしかに「逆転の構図」はバランスがいいですよね。シスターが出てきたり、酔っぱらいが「余は○○なり!」っていう口調だったり、ゲストキャラも魅力的でしたね。

 吹き替えがすばらしいですよね(笑)。あの口調、『逆転裁判』シリーズでやりたかったんですけど、難しくて断念しました。あとは、ありきたりかもしれないですが、僕は「2枚のドガの絵」[注15]や、ロープウェイの「死の方程式」[注16]も好きです。

大倉 「死の方程式」を挙げるのは、『コロンボ』好きの方のなかでは珍しいかもしれないですね。

 あと挙げるなら……「自爆の紐」[注17]も好きですね。

大倉 いいですね。……いってみれば、ファンは『コロンボ』の全部が好きなんですよ(笑)。

 でも、僕は挙げていただいたなかだと正直、「仮面の男」があまりピンと来なかったです。というのも、あまり印象に残っていないんです。

大倉 「仮面の男」って、パトリック・マクグーハン[注18]が犯人役と監督を兼任しているんですけど、ミステリ作品として撮っていないというか……ただただ暴走しているんですよね。トリック的には本当に取るに足らないものだと思いますし。ただ、私にとっては『コロンボ』って、脚本やトリックの整合性というよりは、映像の演出がダイレクトに胸に響いいてくる作品なんですよ。

 なるほど。映像作品としてすばらしいのですね。

大倉 映像作品として完成している『コロンボ』と波長が合っちゃったんです。なので、ベスト3を挙げると、トリックの完成度などを重視して選んでいる方と、好きな作品が全然かぶらないんですよね(笑)。

『コロンボ』トークに夢中で話が止まらない巧さんと大倉さん。大倉さんも執筆されている、別冊宝島『刑事コロンボ 完全捜査記録』の緻密な内容を凝視されています。

『コロンボ』トークに夢中で話が止まらない巧さんと大倉さん。大倉さんも執筆されている、別冊宝島『刑事コロンボ 完全捜査記録』の緻密な内容を凝視されています。

――も……、盛り上がってまいりましたが、そろそろお時間が……。最後に、読者のみなさんに、ひと言ずつお願いいたします。

大倉 『逆転裁判』シリーズには、すごく『コロンボ』を感じるんですよ。具体的にいうと、『逆転裁判4』第4話「逆転を継ぐ者」の点滴の色の件とかですね。明言は避けますが、「この時間この場所にいなかったら、あなたはこの事実を知っているはずがない」という、『コロンボ』にも登場する論理が使われていて、グッときましたね。巧さんに、これからも作りこんでもらいたいのは、そういった論理の部分なんです。法廷バトルで勝利して無罪を証明するのが『逆転裁判』の肝ではなくて、そこへ向かう過程だと思っています。

 コロンボ』好きの方にそう言っていただけると、すごくうれしいです。そういえば、『コロンボ』はいわゆる本格的な倒叙ミステリですが、最近、ネットで「おすすめミステリ小説」といったサイトを見ていると、叙述トリック系[注19]をあげる方が多いんですよね。叙述系というのは、たしかに物語の終盤に、巨大な驚きが待っているというおもしろさがあるし、僕も叙述系で大好きな作品はたくさんあるのですが、それが王道のミステリだと思ってほしくないんですよ。

大倉 そうですね。叙述系ミステリというのは、今の時代に合ったわかりやすさはあるかもしれませんが、「おすすめミステリ小説ベスト5」としてあげられている作品が全部叙述系だったりすると、ちょっと残念ですよね。

 ミステリの本来のおもしろさは、いくつもの伏線がつながって、美しく解けていくロジックであってほしいと思います。そういう王道の作品群の中に、たまに叙述系があるからこそ輝くわけで。でも、そういう叙述系がキッカケになって、そこから様々な名作に触れていただけるようになったら、ミステリ好きとしてはうれしいですね。ミステリの世界は、広くて深いですから。もちろん、テレビドラマの『コロンボ』もぜひ一度、観ていただきたいと思います。

――巧さん、大倉さん、ありがとうございました!

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  • 注1 『刑事コロンボ』 アメリカで1968年より放送されたサスペンスドラマ。ロサンゼルス市警察殺人課に所属するコロンボが、周到な犯人を巧みな駆け引きで追い詰める姿が描かれる。全45話。後の『古畑任三郎』にも影響を与えた、いわゆる倒叙系ミステリの形式をとる。
  • 注2 倒叙 犯人の犯行を読者/視聴者に見せたあと、それを知らない主人公が推理していく模様を描く手法。この倒叙系ミステリといえる『刑事コロンボ』はにおいては、まず、犯人が犯行を起こすシーンが描かれ、それをコロンボが解明し、犯人を追い詰めていくスタイルの物語である。
  • 注3 ピーター・フォーク 『刑事コロンボ』『新・刑事コロンボ』にて主役のコロンボを演じた俳優。ひょうきんを装って推理を進め、最後の最後で絶妙な冴えを見せて犯人を追い詰めるコロンボの演技は、世界中の人々に愛されている。年、おしくも逝去。
  • 注4 なるほどくん 『逆転裁判』シリーズのメインキャラクターである成歩堂龍一の通称。ちなみに、『大逆転裁判』の主人公は、成歩堂龍ノ介という名前で、龍一の先祖という設定であり、『大逆転裁判』における「ナルホドくん」とは、龍ノ介のことを指す。
  • 注5 「仮面の男」 旧シリーズ第34話。経営コンサルタント・ブレナーは、かつての相棒・ジェロニモから、CIAの情報部員で、「二重スパイ」の内職を行っていた過去をばらすという脅迫を受ける。脅迫を受けたその晩、ブレナーは、仕事終わりのジェロニモを撲殺する。被害者の身元がまったくわからないうえに、犯人の情報も少ないという状態のなか、コロンボはさらに、CIAの部長に手を引くように要請される。犯行前に、ブレナーとジェロニモが遊園地での密会、その際に射撃コーナーの景品でパンダのぬいぐるみをゲットして女の子にプレゼントするなど、ちょっとほっこりするようなシーンも見どころ。
  • 注6 「殺しの序曲」 旧シリーズ第40話。知能指数がトップから2%という天才だけで構成される「シグマ協会」の会員であるオリヴァーとバーティー。「シグマ協会」の会合の後、バーティーを呼び出したオリヴァーは、彼を銃殺する。本作の見どころはやはり、オリヴァーとコロンボの2人の天才の対決だろう。クライマックスの直前に、2人が互いの生い立ちを話すシーンは、オリヴァーがコロンボにだけは自分のトリックを理解してほしいと思っているようにも感じられる。ちなみに、ウェイトレス役として、ホラー映画『ハロウィン』などでおなじみのジェイミー・リー・カーティスが出演している。
  • 注7 『新・刑事コロンボ』 アメリカで1989年から2003年まで放送された『刑事コロンボ』新シリーズの日本語版タイトル。全24話。
  • 注8 「だまされたコロンボ」 新シリーズ第6話。男性誌のオーナー・ブラントリーは、共同経営者のダイアンから、イギリスの大実業家・マシューズに、雑誌の株を売却し、彼を追放すると宣言される。数日後、ダイアンはマシューズのいるロンドンへ向かうが、そのまま行方不明になってしまう。この不可解な事件を解決するため、ロンドン警視庁はコロンボに捜査を依頼する。コロンボの助言によって、警察はダイアンの死体はブラントリーが所有する広大な敷地にある屋敷「シャトー」にあると踏むが……。架空の殺人でコロンボを翻弄しようとするなどの、トリッキーなトリックが見どころ。
  • 注9 「魔術師の幻想」 旧シリーズ第36話。魔術師・サンティーニは、「水槽の幻想」(鍵をかけて水槽内に吊した箱から脱出する手品)の上演中に、数々のトリックを駆使して、弱みを握られているクラブのオーナー・ジェロームを射殺する。邦題「魔術師の幻想」は、コロンボの最後の台詞からとられたもので、その意味はラストで明らかになる。
  • 注10 「野望の果て」 旧シリーズ第20話。上院議員候補ネルソン・ヘイワードの起こす殺人事件が描かれる。幼稚で人間くさい一面を持つヘイワードの悪事が家族の前で暴かれる、恥ずかしすぎる解決シーンが見どころ。
  • 注11 「策謀の結末」 旧シリーズ第45話。非暴力をモットーと掲げる詩人・デヴリンは、密かに革命用銃器の大量密輸を計画していた。しかし、銃の仲介人・ポーリーが金の持ち逃げを画作していることが発覚する。裏切られたデヴリンは、ポーリーの銃を使って彼を殺害する。旧シリーズの最終話ともあって、話のスケールも大きい。多くの人命がかかる大事件のなかでの、ウィットに富んだコロンボとデブリンの発言や行動が見どころ。
  • 注12 「別れのワイン」 旧シリーズ第19話。ワイナリーの経営者・エイドリアンは、ワイナリーを売却しようとする腹違いの弟・リックを、ワイン貯蔵庫で窒息死させようとたくらむ。エイドリアンがワインを愛するがゆえに行った犯行だが、彼自身のワインへの深い愛があだとなって、結果コロンボに犯行を暴かれてしまうという見事な構成も、ファンから人気を集める理由だといえるだろう。「窮余の策」という意味を持つ原題「Any Old Port in a Storm」から「別れのワイン」という邦題をつけたことに対する評価も高い。
  • 注13 「忘れられたスター」 旧シリーズ第32話。かつて一世を風靡した名女優・グレースは、夫にミュージカルの上映を拒否され、夫を殺害しようとたくらむ。『刑事コロンボ』シリーズのなかで、数少ない犯人が女性のエピソード。犯人役は、「殺しの序曲」にてウェイトレスを演じていたジェイミー・リー・カーティスの母、ジャネット・リーが演じている。余命いくばくもない往年のスターの描写が絶妙で、泣ける話として名高い。
  • 注14 「逆転の構図」 旧シリーズ第27話。写真家のガレスコは、妻のフランシスを銃で殺害し、その罪を元囚人のダシュラーなすりつけようとする。一見完璧に見えるガレスコの「逆トリック」の矛盾を、次々と指摘していくコロンボの痛快な活躍はシリーズ随一。
  • 注15 「2枚のドガの絵」 旧シリーズ第6話。濡れ衣工作を行って、殺人の罪を逃れようとする美術評論家デイル・キングストンに対し、コロンボの推理が炸裂する。駆け引きの末に、ラストシーンで見せたコロンボの表情が絶妙!ゲストに、『猿の惑星』シリーズでジーラを演じるキム・ハンターが出演している。
  • 注16 「死の方程式」 旧シリーズ第8話。スタンフォード化学工業のお家騒動から生じた爆殺事件が描かれる。犯人を演じるロディー・マクドウォールは『猿の惑星』シリーズでコーネリアスとシーザーを演じており、被害者役のジェームズ・グレゴリーも『続・猿の惑星』でウルサスを演じていたことなどからわかるように、『猿の惑星』のキャストが多い回としても、有名。
  • 注17 「自縛の紐」 旧シリーズ第26話。犯人である健康倶楽部の経営者マイロ・ジャナスがかなりの悪党で、激怒するコロンボを拝める回。ちなみに、心臓外科医を演じるレナード・ニモイと対決する第15話「溶ける糸」でも、悪辣な殺人鬼に対してコロンボが激怒している。
  • 注18 パトリック・マクグーハン アメリカの俳優。『コロンボ』では新シリーズも含めると全6話に出演しており、シリーズファンにはなじみ深い。旧シリーズ第28話「祝砲の挽歌」での演技が認められ、エミー賞最優秀助演賞を受章している。
  • 注19 叙述系 ミステリにおいて、登場人物の性別や時間軸を秘匿するなど、様々な仕掛けによって読者に誤解を与えることで、ラストでどんでん返しを行い、衝撃を与える手法。「このミステリは叙述で~」と言った瞬間に、半分以上ネタバレになる。

取材・構成:山田幸彦

『大逆転裁判』公式サイト

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