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【悲報】 「あずきバー」値上げ!? 日本経済はここまでヤバかった!!【B級ニュース】

2016/03/22


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「井村屋、あずきバーの値上げを発表」について。


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『あずきちゃん なかよし60周年記念版』第1巻
秋元康(作) 木村千歌(画) 講談社 ¥490+税
(2015年10月6日発売)

衝撃的なニュースが飛びこんできた。
井村屋グループがアイス「あずきバー」の値上げを発表したのであるッ!

4月1日出荷分から価格を10円アップし、従来の60円から70円へと改定。じつに24年ぶりとなる値上げとなる。
いや、むしろ24年も値上げしていなかった事実に驚嘆すべきだろう。

1992年からの24年のあいだには2度にわたる消費税の増税(3パーセント→5パーセント、5パーセント→8パーセント)があり、なおかつデフレ不況が長期化したこともあり、あらゆるメーカーが商品価格の値上げや、内容量の減少による“実質的な値上げ”に踏みきってきた。
にもかかわらず、これまで価格を維持してきたのだから、今回の値上げもやむなし、といったところか。

それにしても驚きなのは「あずきバー」の人気の高さだ。6本入りの「BOXあずきバー」 は、なんとアイスクリーム類の売り上げランキングで常に上位にいる人気商品。
1973年に発売以来40年以上のロングセラーでありながら、今なおトップセールスを誇る国民的アイスなのである。
……まあ、でも、ぶっちゃけ若い子は、チョコが入っているヤツとか、ガリガリしたヤツとかのほうが好きだよね?

しかし年齢を重ねて味覚が変化するにつれて、やっぱりあずきの味がバッチリとアジャストしてくるのだ。
肉より魚がおいしく感じられるようになるとか、おでんの大根がたまらなくなるとか、そういうのと同じなのかもしれない。おそるべし、あずきマジック!

というわけで今回は、われわれ日本人と「あずき」の結びつきをマンガでひもといていきたい。


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『水木しげるのニッポン幸福哀歌(エレジー)』
水木しげる KADOKAWA ¥629+税
(2006年7月25日発売)

あずきバーといえば、その硬さも特徴のひとつだ。

生前、水木しげる御大があずきバーを「ムアッ」と食べている写真をtwitterにアップし、「なんで90歳超えてあんな硬いモン食えるんだよ」と誰もが驚いたハズ。

そもそもあずきバーは、原材料はゆであずきと煮汁くらいのものなので、氷の硬さに近い。そのへんのヤワなアイスなんかメじゃないくらいにハードコアなのである。
そして、無香料・無着色だからこそ、そのままレンジでチンすれば、ぜんざいにもなるというスグレモノ。昨年『マツコの知らない世界』では、あずきバー2本をレンジで溶かし、そこにロッテ「雪見だいくふく」を入れるという、メーカーの垣根を越えたチョイ足し「クリーム白玉ぜんざい」のレシピが紹介され、おおいに話題になった。

さて、水木御大の著作では、『水木しげるのニッポン幸福哀歌(エレジー)』に妖怪・小豆洗いを題材にした短編「小豆洗い」が収録されている。
小豆を洗う妖怪……って、それはただ小豆を洗っているオッサンじゃないかというツッコミも浮かぶが、ともあれ小豆は民話に出てくるほど、昔から愛されている食べものであることがわかるだろう。ほかにも小豆絡みの妖怪といえば、小豆はかりとか、小豆婆とか……。あ、あずきババー?

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『あらいどき。』第1巻
橋本ゆうすけ 講談社 ¥429+税
(2014年6月9日発売)

小豆洗いが出てくるマンガとしては、『あらいどき。』もある。

主人公の新井和時は、一見すると普通の高校生だが、その正体は小豆洗い。なんでも洗って掃除して綺麗にしないと済まない性格だ。あるとき金髪の美少女の聖美春が転校生としてやってくると、平和な日常は一転。美春の正体は天使であり、妖怪(=小豆洗い)を悪魔と勘違いした美春によって、和時は命を狙われることになってしまう。
小豆洗いを主人公にした、一風変わった学園ドタバタ・コメディである。 ちなみに主人公の家はクリーニング屋を営んでおり、親友の霧ヶ峰鋏介(正体は妖怪かみきり)の実家は美容室と、弱小妖怪が地域社会にスンナリとなじんで日常生活を送っている点がおもしろい。

また、4月4日にコミックス第1巻が発売予定の『アライアズキ、今宵も小豆を洗う。』でも、小豆洗いがキーパーソンとして登場する。
腐女子漫画家のカトリーヌ渋谷川(本名・道端寄子)は、かつてアズキアライに「リアルな男に恋する心」を奪われた経験を持つ。ひょんなことからアズキアライ(人間名・ 新井阿月)と再会すると、アズキアライは渋谷で探偵事務所を経営していた。そして寄子は、アズキアライの調査を手伝わされることに。

小豆洗いという妖怪は、意外とマンガでは大きな役割を与えられるのだ。


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『おかゆネコ』第3巻
吉田戦車 小学館 ¥743+税
(2014年8月29日発売)

世の中に料理マンガは数あれど、ぜんざい以外の小豆料理を扱った作品はなかなか見当たらない。
小豆に派手さはないので取りあげづらいのも納得だ。地味なのはたしかだ。そんななか、吉田戦車『おかゆネコ』3巻には小豆粥が登場する。

本作は、なぜか人語をしゃべるネコ・ツブが、ご主人の八郎のためにひたすらおかゆをつくるストーリー。八郎はひとり暮らしのサラリーマンで食習慣が乱れているので、ツブはおかゆをつくるのだ。猫舌だけど。
登場人物や世界観は、従来の吉田戦車のナンセンス・シュールギャグそのものだが、出てくるおかゆはすべて作者が実際につくったもので、レシピも公開される。シュールとリアリティが謎のバランスをとっており、不思議な味を醸しだす作品である。


ほかにも『あずきちゃん』とか、『バクマン。』の亜豆美保とか、主役やヒロインの名前に付けられることも多いのが「あずき」だ。
あずきには一見した派手さこそないけれど、日本人の生活に深く根ざしているおかげで、無意識のうちにわれわれが愛着を抱くものなのである。

これまで見てきたように、マンガやアニメ文化とは相性がよさそうだ。
そして井村屋グループは、萌え系制服飲食店の嚆矢ともいえる「アンナミラーズ」を運営している。アンミラがなければ、いまのメイドカフェブームも存在しなかったのではないだろうか。

つまり……、秋葉原あたりで「あずきバーカフェ」とか、どうですか井村屋さんッ!!
かわいらしいパステルカラーのコスチュームを着たメイドさんが、あずきバーを萌え萌えキュンとか、どうですかッ!!
単価が安くて商売になりませんかッ!!?
じゃあいっそアルコールも提供できる「あずきBar」は……、って2週連続ダジャレ落ち!?

値上がりしても、まだまだ安いあずきバー。
これから暖かくなるシーズン、マンガのおともにどうでしょう。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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