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【ロングレビュー】“戦時下”だって日常は豊かな彩りに包まれる。でも… 『あとかたの街』 おざわゆき

2014/08/06


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太平洋戦争において、戦闘が主に行われたのは、中国、東南アジア、南太平洋など。名古屋をはじめとする本州は、非戦闘員が居住する「銃後」であった。しかし、空襲によって、「銃後」は一瞬にして「戦地」に様変わりしてしまう。そして、銃後の暮らしが丁寧に描写されているからこそ、その恐ろしさは真に迫る。

軍事教練や学童疎開、勤労動員など、あいたちの生活からも「時局の悪化」が読み取れる。

軍事教練や学童疎開、勤労動員など、あいたちの生活からも「時局の悪化」が読み取れる。


1巻ラスト、突如として名古屋上空に航空機が姿を現す。まだ空襲は描かれていないが、その機影に読者は「起こりうる最悪の未来」をいやがおうにも予測する。

名古屋上空に突如として飛来した米軍機。機影が物語への不吉な予兆を投げかける。

名古屋上空に突如として飛来した米軍機。機影が物語への不吉な予兆を投げかける。


空襲によって日本中の人々が傷ついた。傷はいつしか癒されなければならないが、しかしそれは「忘れる」と同義ではない。過去への視座を持ち続けるには、本作のような「過去の生活者からの視座」が標石となる。先人の足跡を、消さないように。そのフォルムを慈しみ指でなぞるような作品である。



『あとかたの街』著者のおざわゆき先生から、コメントをいただきました!

おざわゆき

ロングレビュー、ご紹介いただいてありがとうございます!

この様な場所で紹介していただけるのは初めてなので、ドキドキしております。

『あとかたの街』は、今の私の感覚と、当時を生きていた人達の接点を探りながら描いた戦争マンガです。

70年の時を経ても、共通の意識ってあるんじゃないかと思います。

名古屋が舞台なので、私のネイティブな名古屋弁もふんだんに盛り込んでおります。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。



単行本情報

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