『あれよ星屑』 第1巻
山田参助 KADOKAWA/エンターブレイン \691
(2014年4月25日発売)
敗戦直後の日本を生きる、“死に損なった”男たちの不器用さが沁みる1冊。
本作に登場するのは、かつて軍隊の同じ班に所属していた上官の川島徳太郎と部下の黒田門松。一足先に市井の人になっていた川島のところに、復員したばかりの黒田が現れるところから物語は始まる。
リズミカルかつキレのある展開、磨かれたセリフ、マンガ的でありながら正確に感情を伝える表情のひとつひとつ、どこをとっても神経が行き届いていて引き込まれる。
川島と黒田、その周辺の人々の会話は基本的に本音剥き出しで、時にそれがユーモラスに映る。土埃舞うなか、不器用でも懸命に生きる彼らの姿も清々しい。
そんな“陽”の様相から一転、真っ黒な画面に浮かぶ死を思わせるモノローグなど、物語の随所に戦争の爪あとが覗く。その詳細は現時点ではまだわからない。この“陽”から深い闇に包まれているような心持ちになる“陰”への転換も素晴らしい。
やわらかく感情を揺らしてくれるこの物語を、ただ純粋に味わいつくしたい。
<文・山脇麻生>
ライター&編集者。「朝日新聞」「SPA!」などにコミック評を寄稿。
個人Twitter @yamamao