さまざまなフィールドで活躍しているマンガ愛読者の皆様に、6月1日から6月30日のあいだに発売されたマンガ単行本から「今月のイチオシ!」とオススメする作品を教えていただき、ランキング形式で大発表!
今回の「オンナ編」は、なんだか“ほっこり”しちゃう作品がいっぱい。クーラーで冷えた体に、心温まるマンガがしみわたる……!? 冷えは美容の大敵です!
第1位(148ポイント)
『あとかたの街』 おざわゆき
『あとかたの街』
おざわゆき 講談社
太平洋戦争末期の昭和19年の名古屋。戦局は日に日に悪化し、空襲の影が迫る。でも、国民学校高等科1年生の木村あいは、もっぱらかっこいい車掌さんに出会ったことや、今日の献立のことに関心が向いている
太平洋戦争のさなか、著者の親族の語った「名古屋大空襲」を題材に、思春期の少女と戦争化でも続く庶民の生活、それを翻弄する時代のうねりを描く。
迫りくる空襲の予感にハラハラしながらも、思わず微笑んでしまうようなエピソードを交えた描き口に支持が集まりました。
オススメボイス! 『右足と左足のあいだ』 雁須磨子
『右足と左足のあいだ』
■『凍りの掌』の作者の最新作。第二次大戦当時は報道管制によって被害状況が伝えられなかった名古屋大空襲の様子が、生活者の視点で描かれる(加山竜司/フリーライター)
■戦争時代を生きた少女の物語。1巻は空襲前の、その時代なりの明るさが描かれるものの、ふとした時に姿を見せる戦争の恐怖がリアルで、非常に印象に残りました(いづき/ブログ「オトコでも読める少女マンガ」管理人)
■「前線」と「銃後」という区別がまったく意味をなさなくなった、第二次世界大戦以降の「戦争」の実相を描いていこうとするもの。銃後の民間人が殺戮される戦争の実態が、これから描いていかれることと思う(廣澤吉泰/ミステリコミック研究家)
■戦争末期の名古屋。12歳の女の子の目を通して描かれる、徐々に悪化してゆく庶民の生活。……目が離せないです(かとうちあき/「野宿野郎」編集長【仮】)
■今このタイミングで読まれることに大きな意味がある作品。戦争が私たちの生活をいかに破壊していくのか。衣食住の丁寧な描写こそが、この作品の真骨頂(小田真琴/女子マンガ研究家)
第2位(100ポイント)
雁須磨子 祥伝社
新婚早々突然EDになってしまった夫との関係を描く表題作「右足と左足のあいだ」を含む7編を収録。みんなに「エラいね」といわれる優等生の女の子や、彼氏と同棲中の女の子、非モテの35歳独身女性といった様々な境遇の主人公に共通して見られるテーマは「口に出せない違和感」。
男女間にいやおうなく存在する“ズレ”。短編の名手たる作者の鋭い着眼点はさすがのひと言!
オススメボイス! 「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ! 『異神変奏 時をめぐる旅』 近藤ようこ
『異神変奏 時をめぐる旅』
■当代一の短編の名手、雁須磨子久々の短編集。主に男女間におけるコミュニケーションの微妙な「ズレ」と、そのおかしみを描かせたら雁の右に出る者はいない。全作品すばらしいが、表題作と「おそるるにたり」が出色(小田真琴/女子マンガ研究家)
■右足と左足のあいだって、あれしかないじゃないですか! 大胆なタイトルとは裏腹に、繊細な恋愛を描くオムニバス。 雁須磨子先生はくせになる(八尾美映子/「三省堂書店」神保町本店 コミック担当)
■同時発売の『つなぐと星座になるように』完結刊、新装版『連続恋愛劇場』もよいが、1冊ならこれを。作者特有の「超口語体」とでも呼びたくなる台詞まわしも冴えまくり。人間がいとおしくなる1冊(川原和子/マンガエッセイスト)
■「雁須磨子ビギナーさん、今です。」というオビの言葉どおり、大好きな雁須磨子先生を人に勧めるなら、まずこれから貸そうかな、と思える短編集。キレイな女の子、ややこしい女の子、どの女の子の心情も自分のことのように切なく感じられます(梅本ゆうこ/ブログ「マンガ食堂」管理人)
第3位(82ポイント)
近藤ようこ KADOKAWA/メディアファクトリー
夫を亡くし実家に戻ってきた灯子は、平田という青年に出会い、村にある古い祠に祀られた像に導かれるようにして魅かれあう。
輪廻転生を繰り返し、時空を超えて何度もめぐり会う2人が運命に翻弄される様を、シンプルかつ大胆なタッチで描き、時代ごとに展開する男女間の悲劇のはかなさが評価されたようです。
オススメボイス!
■雑誌発表から2年の年月を経ての単行本化。ていねいに描かれた佳作(白峰彩子/書誌屋)
■既刊の新装版含め、立て続けに充実した新刊が発売される作者の、時空を超えた男女をめぐる物語。不思議な余韻が残る(川原和子/マンガエッセイスト)