複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう！　マンガを読めば、世相が見えてくる!?　マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう！　それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「荒木飛呂彦先生、ベストドレッサー賞を受賞」について。

『ジョジョの奇妙な冒険』 第35巻
荒木飛呂彦 集英社 ￥390+税
（1993年11月発売）

URYYYYYY!!!!!!

『ジョジョの奇妙な冒険』でおなじみの荒木飛呂彦先生が、今年のベストドレッサー賞を受賞したぞッ!!

56歳には見えない若さに場内は騒然となり、受賞インタビューでは若さのヒケツに質問が集中した。

せっかくのッ！
荒木先生にッッ!!
話を聞ける機会なのにッッッ!!!
そんな　ねむっちまいそうな　のろい質問で　荒木飛呂彦が
倒せるかァ――――――――――!?

しかし荒木先生も慣れたもの。
若い編集者の生き血を吸っている……と答えるはずもなく、
「東京都の水道水で毎朝顔を洗っているだけです」とさわやかに応じたそうだ。

だがちょっと待ってほしい。

あの荒木飛呂彦が、わざわざ「東京都の水道水」と名指ししたのである。これを「煙に巻いた」とか「はぐらかした」などと受け取るのは早計だ。
もしかしたらわれわれのあずかり知らぬところで、水道水はすでに押せば命の泉が湧き出る養老ウォーターへと超越していたのかもしれない。

ウ、ウ、ウォーター（W.A.T.E.R）ッ!!

そこで今回は、北島マヤがサリバン先生から水を教えられた（『ガラスの仮面』）時のごとく、水道水を徹底調査していく。

まずは水道水の大元である公益社団法人日本水道協会に突撃。
こちらの公式ホームページでは、同協会発行の3種類のPRポスターが確認できる。
まずはこのリンク先を見てほしい。

このポスターマンガの主人公は、水道局に勤務する父を持つ女子高生。
野球部の水野君のことが好きなのだが、ちょっとだけ愛情表現が苦手な様子で、いつも物陰から水野君が水道水を飲んでいる姿を遠巻きにながめているだけ。

そして水野君が水道から離れると、電光石火の早わざで同じ蛇口から水を飲み、
「さっきまで水野君（ハート）が飲んでた水道水、飲んじゃったぁ!!　おいしーい!!」と叫ぶ、なかなかイルな感じの純愛体質の女子である。

しかも水道水を飲みながら、水野君に萌え萌えキュン状態になるだけではあきたらず、水道局に勤めるお父さんや、全国の水道管理者への感謝の念をふくらませていく。

全然恋の始まりそうな予感がしないところがすばらしい。

『バトルスタディーズ』 第7巻
なきぼくろ 講談社 ￥580+税
（2016年8月23日発売）

そして水道水と高校球児といえば『バトルスタディーズ』だ。
著者のなきぼくろは大阪の名門・PL学園の9番ライトとして甲子園に出場した経験を持つバリバリの元高校球児である。
そんな著者自身の体験をもとにしたのが本作。

あこがれのDL学園に入学した狩野笑太郎が、厳しい規律と上下関係に苦しみながら、名門校でレギュラーの座を目指す本格高校野球マンガだ。
寮生活や練習風景の描写は、さすがに元名門校の球児が描くだけあると、うならされる。

春季大阪大会を制したDL学園は、いよいよ夏の甲子園の前哨戦である近畿大会へと向かう。
しかし、夏が近づいて気温が上昇してくると、下級生にとって死活問題となるのが“渇き”。
上級生の前で水道水をガブ飲みなんかできるはずがなく、一年生は先輩の目を盗んではコソコソと喉を潤す。

「LESSON/73 スーパードライ」（第7巻収録）では、DL球場の水源地（オアシス）を求めて、一年生たちが練習前や練習中に四苦八苦する。一年生部員たちの渇きレベルが個別に表示されるのがおもしろい。
この話を8巻まで引っ張るのだから、それだけでも水道水のありがたみがわかるというもの。

水道水を飲めば、死にかけた球児もたちまち蘇るのだッ！

『鉄鍋のジャン!R 頂上作戦』 第7巻
西条真二（著） おやまけいこ（監） 秋田書店 ￥400+税
（2008年8月8日発売）

日本の水道水が世界一安全であることを存分にアピールしたマンガといえば『鉄鍋のジャン!R 頂上作戦』（西条真二、監修：おやまけいこ）。

日本中華料理界頂上決戦「ビッグ大谷日堂杯」に出場した主人公・秋山醤（ジャン）は、決勝戦で佐藤田十三と対決する。
「酢豚｣勝負では両者100点満点となり、引き分け再試合で提示された課題は「水料理」。両者が選んだ料理は、食材こそ違うものの、奇しくも「水煮対決」となった。
あらゆる水知識を駆使して戦う佐藤田に対し、醤の作った料理の決め手となった水は……なんと水道水！

料理マンガで水道水が勝敗の決め手となるのは前代未聞。
その内容や勝負の顛末は、ぜひともその目で確認してほしい。

『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』 第7巻
矢吹健太朗（著） 長谷見沙貴（脚） 集英社 ￥438+税
（2013年4月4日発売）

最後に紹介するのは『ToLOVEるダークネス』だ。
ご存じ「ジャンプSQ.」が誇る大人気エロエロラブコメディである。

第28話「Infiltration ～キョーコ！ 参る？～」（第7巻収録）では、人気アイドルの・マジカルキョーコこと霧崎恭子が主人公たちの彩南高校で特別講演会を開催することに。
講演終了後、主人公のリトが恭子に校内を案内するのだが、その際にクラスメイトの籾岡里紗が、今頃リトと恭子はこんなふうになっているに違いないと妄想をたくましくする。

その妄想のなかでは恭子が自分の手でスカートをたくし上げ、リトに迫るッ！
ところが肝心な場所は、水道の蛇口に隠されているのだッ!!
矢吹先生、そんな隠し方があったんですかッッ!!!!

さらに蛇口には反射して、ナニかが映っているような……映っていないような……。
まさしく水道の蛇口こそが、21世紀日本の最新式の脱法エロスなのである。

どうだろう。
あらゆるマンガで、水道と水道水がキーポイントになっているではないかッ！

つまりマンガ界の巨匠・荒木先生は、マンガにとって水道がいかに大事なのかを、我々に示唆してくれていたのだ。
なんというありがたい教えッ!!
そもそも荒木先生と水道といえば、アニメが絶賛放映中の『ジョジョ』第4部「狩り（ハンティング）に行こう！」（単行本35巻収録）のネズミ退治を思い出さずにはいられないハズ。

なぜかって!?

どちらも狩る気（カルキ）が大事です。

ネズミっちですッ！

＜文・加山竜司＞
『このマンガがすごい！』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー（オトコ編）を担当しています。
Twitter：@1976Kayama

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