『なんくる』第1巻
さだうおじ KADOKAWA/メディアファクトリー \514+税
(2014年8月27日発売)
島にたったひとつの中学校、全校生徒は男子ばかりで計4名。1カ月前に東京から転校してきたみやこクンは、沖縄の離島のゆるすぎる生活にいささか困惑気味だ。
なにしろ生徒ばかりか、先生さえも遅刻の常習犯。決まった時間割にしばられず、牛の出産だったり漁だったり、そのときどきの“好機”に乗じて臨機応変に日々のことを決めるなんて多くの日本人には考えられない!
こんなにのんびりしていたら東京に戻ったとき勉強についていけなくなる、と不安に思うみやこはカリカリ。しかし、その一方、この島に都心にはない豊かさを感じているのも事実。また、“どうやっても生きていける”と大きくかまえる友人たちに、人間としてのたくましさを見るのだ。
生まれ育った地元を愛する男の子たちが、みやこにも島を好きになってほしくてあれこれ画策するのもほほえましい。都会っ子のみやこが小さな冒険に少年らしい好奇心を刺激されつつツンデレぶりを発揮しつつ、仲間の一員になっていくさまが楽しみどころだ。
“なんくる”は沖縄の方言で「自然に」「ひとりでに」という意味。「なんくるないさ」で「どうにかなるさ」。
休暇はないけどリフレッシュしたい、気持ちの上だけでも余裕は忘れずにいたい、そんなみなさんにこそオススメの作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」