日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バンデット』
『バンデット』 第2巻
河部真道 講談社 ¥570+税
(2017年4月21日発売)
『バンデット』は、『ライズ』で第32回MANGA OPEN森高夕次賞を受賞してデビューした河部真道の初週刊連載作。
狂乱の鎌倉末期を舞台に、命の限り生き抜こうとあがく者たちを描く歴史アクションだ。
1323年(元亨3年)11月。商人に奴隷としてこき使われる下人の少年・石(いし)は、思わず主人を殺し処刑されることになる。
しかし、同じく処刑場の河原に座らされた奇妙な男・猿(さる)と組み、死地を脱した……。
そして始まる2人の成りあがり物語。
この第2巻では、石は後醍醐天皇の若き皇子・大塔宮のいる延暦寺で武芸の腕を磨く。
半年後、猿の指示で不穏な空気に満ちた京へ潜入した石が見たものは……。
表情豊かな登場人物の顔にグッと迫る描き方は、荒々しくくせもあるが、その勢いこそが疾風怒濤の中世日本で暴れまわる者たちの生きざまを活写する。
“登場人物全員悪党”というキャッチのとおり、彼らは悪人ではなく、力ずくで自らを認めさせようとする“悪党”。
後醍醐天皇や赤松円心、大塔宮といった『太平記』で知られる有名人も、石や猿のような無名の人々も“権威に仇なし、己に忠ずる”という信念に貫かれ、エゴイスティックそのものだ。
マンガよりも“空気”を読みすぎて疲れている現代人に、一撃をお見舞いする!
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でファンタジー時評、「かつくら」でライトノベル時評を連載中。
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