日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新・血潜り林檎と金魚鉢男』
『新・血潜り林檎と金魚鉢男』 第2巻
阿部洋一 アース・スター エンターテイメント ¥600+税
(2017年5月25日発売)
『バニラスパイダー』『橙は、半透明に二度寝する』『少女奇談まこら』の阿部洋一の、もうひとつの代表作にして、未完のまま終わることが危惧されていた怪作『血潜り林檎と金魚鉢男』。
この『新・金魚鉢男と血潜り林檎』はその続編であり、最新刊となる第2巻でシリーズは完結する。
書店員さんも勘違いしていたのだけれど『新・血潜り林檎と金魚鉢男』は『血潜り林檎と金魚鉢男』の新装版ではなく、続編だ。
『血潜り林檎と金魚鉢男』を読んでいない人も安心、『新・血潜り林檎と金魚鉢男』第1巻にはそれまでのあらすじがまとめられているし、何より仮に『血潜り林檎と金魚鉢男』のほうを読んでいたとしても、ストーリーの意味はほとんどわからない。
何しろ、この作品の敵は頭が金魚鉢になっている“金魚鉢男”であり、こいつにやられると人は金魚になってしまう。
それを救うために金魚すくいのポイを持って被害者にダイブするのはスクール水着姿の少女たち。
大丈夫、これはマンガのあらすじだし、書いてる僕の頭も、読んでいる読者のあなたの頭もたぶんまだ狂ってない。
狂ってるのはこの作品の世界観だ。
この世界観が、昭和時代の昼下がりを思わせる独特の落ち着いた雰囲気に満たされ、まるで日常系のラブコメのように淡々と異常な出来事が連鎖していく。
ノスタルジーもエロスも、萌えもホラーも飲みこんで、本作はとうとうクライマックスを迎えた。
「ちゃんと完結しないのが不安だからもう読まない……!」といってる読者の声を聞いたことがあるが、安心してほしい。
これはれっきとした完結だ。せつないけれど……。
それにしても、このエンディングをどう捉えたらいいのだろうか。
考え続ける必要がありそうだ。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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