『オニクジョ 阿部洋一短編集』
阿部洋一 集英社 \600+税
(2015年3月19日発売)
人間の住む街にやって来て悪さをするオニを駆除する……それがオニクジョだ!
いずれも可憐な女子高生の姿をしたオニクジョは、吹き矢一発でオニを無残に吹っ飛ばす力の持ち主だ。とはいっても、殲滅するのはあくまで人間をおびやかすオニのみである。
本作は、この“オニクジョ”が登場する作品を主に編まれた短編集だ。
京都で下宿生活を送る大学生・宗太の部屋に、子どものオニが突然現れる。
泣き出すオニの話を聞けば、街で人間に絡むオニをやっつけるオニクジョを目撃。自分も悪いオニの仲間だと誤解されたかもしれないと脅えて、宗太の部屋に逃げこんだのだという。
ところが、宗太の部屋の向かいに住む女子高生こそ、そのオニクジョだとわかって……!?
おどろおどろしいムードとほのぼのしたかわいらしさ、両方をたたえた絵柄でつづられる、どこか温もりを感じる伝奇ストーリー。
オニクジョにもオニにも、人間と同様に個々の性格があって、それぞれの人生がある。そんな視線を物語に落としこむ作者独自の感覚が、新鮮な驚きをもたらす。
平成23年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門・審査委員会推薦作品に選ばれた、同作者の『血潜り林檎と金魚鉢男』もオススメ!!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」