『がんばる!ストーカー』第1巻
伊藤広明 講談社 \429+税
(2014年9月9日発売)
ストーカーは恐ろしい犯罪だ。
しかし、【1】二次元で、【2】かわいくて、【3】理性的、そんな女の子にだったらストーキングされたい人は多いんじゃないかと思う。
……もっとも「理性的」だったらそもそもストーキングなんてしないんだけど。
「理性的なストーカー」を描いたのがこのマンガだ。
美人で巨乳なクラスメイト・神春ラララ。彼女はこっそり自分の後をついてまわり、視線を向けてくる。
尾行されている少年・花丸が「彼女は僕のことを好きなのか?」と考えるのは至極当然。
しかし実際は逆だった。神春は最初、「花丸が自分のことを好きなのではないか」と感じ、確かめるためにストーキングをしていた。
ところがつけまわすうちに、次第に自分が彼のことを意識しているのではないかと感じはじめる。さらには、こっそり後をつける行為そのものに、意義を見出し始めてしまう。
かくして、神春による「自分は花丸が好きなのか」「ストーキング行為が好きなのか」を検証するための、ストーキングが再開される。
とんちんかんな行動ではある。でも花丸はまんざらではない。だよね。かわいい女の子だし。
作中での神春は、意外にも常識人だ。
たとえば「盗聴」。もちろん犯罪。しかし神春は、花丸に許可をとる。嫌がることは決してしない。同意のうえだから犯罪にならない。
この作品におけるストーキングは、いわば自己確認行動。恋愛の駆け引きではない。
言うなれば、テニスの練習でお互いが球を打ちあって、自分の感触をチェックする行為によく似ている。
1巻後半で登場した生徒会長が「ストーキングはおかしい」とまっとうな意見を言うことで、事態はようやく動き始める。
ところが読んでいると、正しいはずの生徒会長側がズレているように感じられる。だって、2人の幸せなストーキングライフを、邪魔しているのだもの。
読むと価値観が、あっさりひっくり返ってしまう感覚、味わってほしい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」