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【インタビュー】山うた『兎が二匹』 山うた流マンガづくりに迫る! 秘密兵器は……フセン!? 最新作『角の男』を200%楽しむ!!!

2017/09/23


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、山うた先生!

骨董店に住む、あるワケありのカップル。じつは主人公の女性・すずは不老不死で、恋人の青年・咲朗は彼女の自殺を毎日手伝っていた――。哀しくもせつない恋物語、『兎が二匹』を手がけた著者・山うた先生に今回、インタビューをさせていただきました!

山うた先生は今月発売された「月刊コミック@バンチ」11月号で、期待の新作『角の男』の連載をスタート。こちらも今、注目を集めています。

前回のインタビューでは、『このマンガがすごい!2017』オトコ編にランクインした『兎が二匹』の制作秘話をたっぷりうかがいましたが、今回は、“山うた流”マンガづくりのお話を聞いています。さらに気になる新作『角の男』のお話も! まだ第1話しか掲載されていませんが、特別に世界観や設定を明かしてくださいました!

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】山うた『兎が二匹』 「人の頭をバットで殴りたい」!? 「不老不死は萌え」!!? 死なない女とただの人、悲しき恋はかくして生まれり!!!!

著者:山うた

2015年、「月刊コミック@バンチ」にて『兎が二匹』(単行本全2巻発売中)で商業デビュー、同作で複数のマンガ賞、ランキングにランクインし大きな注目を集める。
「月刊コミック@バンチ」11月号(9月21日発売)より新作『角の男』連載スタート。


プロットとネーム段階で コマごとの役割を設定

――『兎が二匹』の連載が決まった時、全9話というのは最初から決めていたことなんですか?

山うた 最初に決めちゃってました。まずはじめにプロットを書いて、その次にエクセルで1話ずつ何が起こるのかを管理して、それぞれの話の中身を具体的に書きだしていきました。

エクセルとは別に、このようなメモも! 「サクのすずへの影響 人と関わることを教える」というシーンについて、 その後の展開や感情がビッシリと記されたフセンを貼ることで管理!

エクセルとは別に、このようなメモも! 「サクのすずへの影響 人と関わることを教える」というシーンについて、
その後の展開や感情がビッシリと記されたフセンを貼ることで管理!


――じゃあ「こういうシーンを描きたい!」みたいなのが先にあるわけではない?

山うた 感情の軸を中心に描いていく感じ、です。コマごとに目的を設定しているんですね。たとえば元気いっぱいな様子を伝えたいシーンだったら、「バタバタ感を出したい」とか。

――コマごとの目的とは、このネームに走り書きされているメモですか?

山うた そうです、そうです。「あざとかわいい」とか「威圧感」とか「迫力」とか。

――全9話で構成することになって、第1話はそのままなんですよね?

山うた ほとんど変わってません。

――ということは、第1話で悲劇的な結果がわかっていて、第2話以降は時間を遡って、その悲劇的な第1話に至るように構成しているわけですが、それは狙ってやっているんですよね?

山うた そうですね、バッドエンドになることをわかっていながら2人の幸せを見ていくと、傷口に塩を塗りこむようなことになるんじゃないかな、と考えました。

第2話から展開される、幼少期の咲朗との幸せな思い出。 第1話での咲朗の死を読者は知るだけに、まさしく「傷口に塩を塗りこまれる」ことに。

第2話から展開される、幼少期の咲朗との幸せな思い出。
第1話での咲朗の死を読者は知るだけに、まさしく「傷口に塩を塗りこまれる」ことに。


――なんでニコニコ話すんですか(笑)。

山うた すごい楽しかったですよ(笑)。ハッピーエンドしか読んだことがないような人に、ハッピーエンドに見せかけてガツンとやれたら素敵ですよね。

――この作品を描いていて、一番楽しかったのはどういったところでしょう?

山うた 全体の構成を考えるのが一番楽しかったです。ここで読者をドン底に落とすにはどういう要素を入れるのがベストだろうか、みたいな。プロット段階がいちばん苦労したんですけど、楽しくできました。

――思い入れのある回、ってあります?

山うた 第2話です。咲朗が押し入れに閉じこもる回ですね。私もよくやっていたので。

――え、閉じこめられたんですか?

山うた いや、自分で入るんです。で、泣き止んだら出てくるんですけど、私には開けてくれる人がいなかったですね(笑)。

父親からなかば捨てられた咲朗は押し入れにこもる。その押し入れを開けてくれたのが、すずだった。

父親からなかば捨てられた咲朗は押し入れにこもる。その押し入れを開けてくれたのが、すずだった。


――ここは特にこだわって描いたぞ、みたいなところはありますか?

山うた 背景を描くのが好きなんですよ。なので、当時住んでいた場所の近くをよく取材して、それをじっくり描いてます。もともと主人公が骨董屋という設定だったので、近所の骨董屋さんと仲よくなっていろいろ教えてもらいました。それで最後に出てくるたんすなんかは、実際にお店に置いてあるものだったんですよ。

すずは骨董屋の2階で骨董品修復を行っている。描きこまれた骨董屋のディテールに注目!

すずは骨董屋の2階で骨董品修復を行っている。描きこまれた骨董屋のディテールに注目!


――主人公を骨董屋にした理由は?

山うた 人見知りなので内々でできる仕事を、というのがひとつ。それから「古い物に囲まれている、古い人」であったほうがいいな、と思ったのがもうひとつの理由です。直し続けていく仕事、というのがお話とマッチするんじゃないかと思いました。

単行本情報

  • 『兎が二匹』第1巻 Amazonで購入
  • 『兎が二匹』第2巻 Amazonで購入

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