人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、浅野いにお先生!
東京に飛来した巨大な円盤(通称・母艦)。ついに世界は終わりを迎える――かと思いきや、ぜんぜん終わらない。3年後、“侵略者”と自衛隊の攻防は続いているものの、それは日常の一部となりはて、中川凰蘭(通称・おんたん)と小山門出たちはごく普通に青春を謳歌するのであった……。
『このマンガがすごい!2016』のオトコ編第18位にランクインの、浅野いにおが描く本格SFの皮をかぶった日常系マンガ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(以下、『デデデデ』と表記)。
最新第5巻がリリース直前となり、ますます目の離せない展開になっている。
そこで本誌取材班は浅野いにお先生に緊急ロングインタビュー。いまだ全貌の見えない『デデデデ』について根掘り葉堀り聞きだすことに成功。
これを読めば『デデデデ』が100倍楽しくなること請けあいですよ!
『おやすみプンプン』から『デデデデ』へ。
目指すは「いちばん売れるマンガ」だった?
――前作『おやすみプンプン』(以下、『プンプン』と表記)の連載当時から『デデデデ』のアイデアはできていたのですか?
浅野 『プンプン』が終わる1年くらい前からありました。ただ話自体は固まっていなくて、あくまで“おんたん”というキャラだけが存在していたんですね。それともう1点、昭和の古典的なマンガのパロディ的な構造でやりたいな、と。
――作中に登場する『イソべやん』ですね。
浅野 僕のマンガって、何か根幹にあるものがないとできないんですよ。『プンプン』の時も「純愛マンガを自分が描いたらこういうふうに脱線していくだろう」という根っこがあった。だから今回は「居候モノだな」と思って。
──その居候が“侵略者”ということが、最近になってわかりました。
浅野 ようやく居候モノになってきました。ずいぶんかかっちゃったけど。
──それにしても『プンプン』とはガラッと作風が変わりましたよね。
浅野 同じことをやってもしかたないので。『プンプン』は過激にやっていたんですけど、今回はあまり好き嫌いが別れないように、今までの自分の評価の穴だった部分を補うかたちでいこうと。そこは意識的にやりました。
──セールス的な野望も?
浅野 そうですね。「このマンガすごい!」のベスト10にも縁がなかったし、「今まででいちばん売れるマンガにしよう!」という想いはあったんですけど……。単行本第1巻が出た時に部数を聞いて「もう、そういうのはいいや」と(笑)。
技術的なものはすべてつぎこんでいるし、すごく満足して描いているので。ただ、今になって第1巻を読みなおすと、ぜんぜんスタンダードなマンガじゃなかった。僕のなかでは「ベタなことしかやらないぞ!」って気持ちがあったんですけど、やっぱり一般的なマンガのセオリーからは外れていますよね。
──世界観としては、「3.11」以降の状況が色濃く反映されていますよね。
浅野 でもそれは、モチーフとして使っているだけなんですよ。「(得体の知れない)だれかに攻められている状態でも、普通の生活は続くんだよ」ということが、震災以前だったらピンとこなかったと思うけど、今ならわかると思ったので。
──特に主張があるわけではない?
浅野 主張はありません。むしろ「主張しないマンガで、もう一歩先に行きたい」と思っていました。
──読者は裏読みしそうですけどね。
浅野 それはOKです。表立って描かないだけで、そういうものが含まれてはいるので。理解力のある人だったら、読みとれるようにはしてある。もちろん、そのまま素どおりしてもかまわない。好きなように読んでいただければ。