『花と嘘とマコト』
あさの 秋田書店 \600+税
(2015年2月6日発売)
大切な人を失った時、もしなんらかの方法で、またともに過ごせるのなら、過ごしたい……と思うのが人情というもの。
でも死人と暮らしたところで、幸せになれるはずがない。ましてや二度目の死は、一度目の死より辛い。
ハナの唯一無二の友だち、マコトは突然の事故で死んだ。しかし彼女は突然、動く死体として生き返る。
はっきりした意識はない。動く死体は人に危害を加えかねないため、ともに生活するのは国からは推奨されていない。
だがハナはマコトへの思いを諦めることができず、マコトの口に人を噛まないようマスクをはめ、こっそりと2人で生活を続ける。
マコトは序々に腐り、記憶は失われ、身体は崩れていく。
生前の未練やわだかまりが解消できず、ハナはマコトの死体に語りかける。
「わたしに出来ることは何でもするからさ……それでもだめなら わたしを食べて」。
できっこないとわかっていても続く嘘の生活。マコトに尽くして安堵する感情。2つがうまくかみあわない。
ハナの心の病がほぐれていく段階が、マコトの死体の腐敗の進行とシンクロしているのが、じつにみごとだ。
彼女の身体が壊れ、隠蔽しながら長らえさせていた医師からは「もう無理だ」と言われる。
同時に、ハナも自身も「このままでいいわけがない」と、序々に自覚していくようになる。
何かに依存し、それを失うことを恐れることは多くの人が経験すること。
これは、依存と不安に怯える少女の、心の回復と、成長の物語だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」