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不死鳥系アイドル・加護ちゃんの半生をマンガで振りかえるのだぴょん!! 【B級ニュース】

2016/02/23


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「加護亜依、新設ブログにて心機一転スタート」について。

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『まだ、やれる』
Girls Beat!! 威風飄々 ¥926+税
(2014年9月10日発売)

先週、元モーニング娘。のタレント加護亜依(28)さんが新公式ブログを開設した。
初日には禁煙マークの下で撮影した写真を投稿。未成年喫煙騒動で所属事務所から契約解除になった過去があるだけに、なかなかパンチのきいたリスタートとなった。

これはつまり「すいません」というメッセージに違いないッ!!

また、6年ぶりとなったソロライブでは「恋愛レボリューション21」などモーニング娘。時代のヒット曲を歌いあげ、健在ぶりをアピールした。
例の未成年喫煙問題が発覚したのは2006年。すでに9年も前のことである。近年はスキャンダラスなイメージが先行していただけに、彼女の“復帰”がなぜ騒がれるのか、不思議に思う若い世代がいてもおかしくない。

そこで今回は、加護亜依さんの功績を振り返りつつ、「アイドル」という特殊な職業について、マンガで考えていきたい。


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『モーニング娘。オフィシャルストーリー 娘。物語』第5巻
神崎裕(画) 田中利花(ストーリー) 講談社 ¥390+税
(2003年4月4日発売)

加護さんは2000年に第4期メンバーとしてモーニング娘。に加入した(同時加入は石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美)。
このときわずか12歳。当初は女性コーラスグループとして始動していた同グループは、4期メンバーの加入をもってアイドル路線へと大きく舵を切った。
以降、「ハッピーサマーウェディング」「恋愛レボリューション21」「ザ☆ピ~ス!」とヒット曲を連発し、国民的アイドルの地位を築いたのである。

長らくアイドル不毛の時代だっただけに、モーニング娘。のアイドル路線は若年層にも熱狂的に受け入れられた。
とりわけ加護さんは、タンポポやミニモニ。といった派生ユニットでも活躍。現在でも小柄な女性のことを「ミニモニ系」と呼ぶほど、その言葉は定着した(用例:阿川佐和子や檀ふみは熟女好きにとってミニモニ。だ、など)。

その「若年層向けアイドル」路線は、「なかよし」にモーニング娘。のオフィシャルストーリー『娘。物語』が連載されたことからも顕著である。

『娘。物語』は各話ごとに異なるメンバーにスポットを当てるオムニバス形式の作品だ。
現実のモーニング娘。の出来事を追っているので、つまり『空手バカ一代』的な作品と言っても過言ではないッ! さすが講談社ッ、梶原イズムのメディアミックスッ!

その記念すべき連載第1話の主人公に選ばれたのが、加護亜依さんだ。
本作は4期メンバーが加入したところからストーリーがはじまり、最終第6巻では“なっち”こと安倍なつみの卒業(2004年1月)までが描かれる。加護さんは同年8月にモーニング娘。を卒業するので、彼女の娘。時代のキャリアは『娘。物語』でほぼフォローできるわけだ。

ちなみに第5巻では映画『仔犬ダンの物語』の撮影秘話が語られるが、主人公のひとり・真生役として、当時10歳の“ももち”こと嗣永桃子(現カントリーガールズ)も登場する。子役感、ハンパないっす。
なお、撮影がうまくいかなくても「ゆるしてにゃん」とは言いません。ごめんなさいね。


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『苺ましまろ』第3巻
ばらスィー KADOKAWA ¥550+税
(2004年3月27日発売)

モーニング娘。卒業から2年後の2006年、加護さんは17歳のときに喫煙写真がスクープされる。よく混同されがちだが、彼女が喫煙で謹慎となったのは、モーニング娘。卒業後のことである。

翌年にも再び喫煙写真が写真週刊誌に掲載されると、所属事務所のアップフロントエージェンシー(現アップフロントプロモーション)は加護さんとの契約解除を発表。
ちょうど世間的にも嫌煙の気運が高まってきた時期だっただけに、未成年者を数多く雇用している事務所としては、苦渋の決断だったのではないだろうか。 未成年者の喫煙は未成年者喫煙禁止法違反なので罰せられてしかるべきだが、まるで覚醒剤を使用したプロ野球選手をバッシングするかのような当時の報道は、さすがに行きすぎた感は否めなかったものである。

喫煙者に対する世間の風当たりは年々強まっていき、今年2月1日、世界保健機関(WHO)は喫煙シーンのある映画を成人指定するように各国に勧告した。マンガ界もその余波に飲みこまれないか、今から心配の種は尽きない。

そもそもマンガは未成年者の喫煙シーンに対して寛容であり、80~90年代のツッパリやヤンキーが出てくるマンガ(『スラムダンク』『ジョジョの奇妙な冒険』空条承太郎、『青い春』など松本大洋の作品群も含む)は壊滅的となる。
また、「かわいいは正義」のキャッチコピーで一世を風靡した『苺ましまろ』(ばらスィー)の主人公・伊藤伸恵も、原作では16歳だが、作中で喫煙している。

現実の世界では本人と周囲への健康被害はじゅうぶんに考慮されるべきだけど、表現の規制は慎重に取り扱うべきだ。


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『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
平尾アウリ 徳間書店 ¥620+税
(2016年2月13日発売)

その後の加護さんは自殺未遂、結婚、出産、離婚を経て、アイドルユニット「Girls Beat!!」に所属。いわゆる地下アイドルである。

地下アイドルとは、メジャーレーベルに所属せず、メディア露出よりライブを中心に活動するインディーズ系アイドルの総称である。ひとくちに地下アイドルと言っても、メジャーデビューをめざしているグループもあれば、企業の商品PRのために期間限定で結成されたユニットもあるので、その業態はさまざまだ。
なお、「地下」という言葉に侮蔑的な意味を感じて忌避し、「ライブアイドル」と呼称する当事者も多い。

そんな地下アイドルを題材にしたマンガが、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』だ。

伝説の女オタ・えりぴよは、生活のすべてを捧げ、マイナー地下アイドル「ChamJam」の人気最下位メンバー・舞奈を熱狂的に応援する。
地下アイドルとドルオタの、近すぎるのに一定以上は近づこうとしない、しかしつねにその場にいる「おまいつ(お前いつでもいるな)」のギリギリな距離感を感じられるはずだ。

ChamJamは岡山で活動しているが、こうした地方アイドルのことを「ロコドル(ローカル・アイドル)」とも呼ぶ。
Girls Beat!!は都内を中心に活動していたが、加護さんは2016年2月いっぱいでの脱退を表明している。


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『ギャンブルレーサー』第5巻
田中誠 講談社 ¥437+税
(1991年3月発売)

現在の加護さんは、元競輪選手・中野浩一の妻でタレントのNAOMIが代表を務める事務所「アルカンシェル」とマネージメント契約を締結している。
アルカンシェルとはフランス語で「虹」を意味し、自転車の世界選手権の王者に1年間の着用が許される「マイヨ・アルカンシェル(虹色のジャージ)」に由来するものと思われる。

中野浩一はかつてプロ・スクラッチ(現スプリント)競技で世界選手権10連覇を達成。「マイヨ・アルカンシェル」を10年間着用したレジェンド中のレジェンドであり、ヨーロッパの自転車界では、今なお尊敬を集める超V.I.Pなのである。けっして「アートネイチャーの人」ではない。
国内の競輪でも数々のタイトルを獲得したが、主要な競走では唯一「高松宮杯」だけ勝てなかった。

しかし、上記のマンガ『ギャンブルレーサー』の第5巻では、主人公の関優勝(せき・まさかつ)が1着入線後に失格となったため、繰り上がりで中野浩一が高松宮杯で優勝している。
この“勝利”をあわせれば、中野浩一はグランドスラム達成となるのだ。


アイドルの実働年数は短く、遅くとも20代の半ばには「卒業」するのが常態化している。
“アイドル戦国時代”と言われてひさしいが、これだけ全国各地にグループアイドルが雨後の竹の子のように誕生していると、今後はアイドルのセカンドキャリア問題が表面化するはずだ。

アイドル卒業後も芸能界で活躍し続けるのは「狭き門」であり、非常にシビアな優勝劣敗の世界である。
しかし、第一線で脚光を浴びるだけがすべてではない。もっとさまざまなセカンドキャリアがあっていいはずだ。16歳でモーニング娘。を卒業した加護さんの半生は、いい面でも、悪い面でも、のちに続くアイドルにとってランドマークとなる。

まだ28歳。加護さんはどのようなポスト・アイドル(アイドル後)の道を歩むのか。あたらしい地平を拓くフロンティアであってほしいと願うばかりだ。

単行本情報

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