モーニング娘。'15の“ズッキ”こと鈴木香音が、激ヤセして話題を呼んでいる。
ポッチャリ体型だった鈴木は、体型をネタにした自虐ギャグや、昆虫のモノマネなど体当たりネタをいとわない「NGなしアイドル」としてキャラを確立していたが、今年6月に「『猛烈頑張る期』に突入」とブログで宣言。一念発起してダイエットに取り組むと、9キロもの減量に成功した。
痩せた鈴木には、SNSやネット上で「かわいい」「別人のようだ」と賞賛の声が相次いでいる。
8月19日に発売予定のシングル曲『Oh my wish!』のMVでは、工藤遥とともにダブルセンターのポジションを務め、オトナっぽい表情で美少女ぶりを披露しているので必見だ。
前リーダーの道重さゆみは、鈴木に対して「真顔は美少女」「シュッとしたらグループの顔になる」と言っていたが、その“予言”を裏付ける格好となった。
もともとポッチャリしていたころからも鈴木には熱心なファンが多く、唐沢なをきは2013年の時点で『電脳なをさん』(週刊アスキー連載)のなかで「何言われても気にすんなー」「やせるなー」「あの太モモにひざまくらー」とエールを送っているほどだ。
また、マツコ・デラックスが「ズッキ推し」を表明したり、2014年のニューヨーク公演ではメンバー中随一の声援を浴びたりと、ブレイクの下地はじゅうぶん。
今回のダイエット成功を機会に一気に飛躍することが期待される。
「痩せたら美少女」というのは、じつにマンガっぽくておもしろい。
「痩せたら美少女(もしくはイケメン)」キャラはさまざまなマンガ作品に出てくるので、今回はマンガにおける痩せ方のパターンを分析してみよう。女性誌的なアオリをつけるなら「マンガに学ぶ、スッキリした痩せ方特集 ~マンガを読んで、痩せちゃおう!~」といったところだ。
『銀の匙 Silver Spoon』第7巻
荒川弘 小学館 \419+税
(2012年10月18日発売)
ケース1は、荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』の稲田多摩子。
大規模農場の令嬢で、経営者としての才覚を発揮する才女でもある。卵のような体型から「タマゴ」とも呼ばれる彼女だが、1年生の夏休み明けにはシュッとしたスリムな美女になって登場(コミックス第3巻)。
激痩せの原因は「ちょっと夏バテしちゃってね…」と説明される。よって痩せ方は「体調不良型」と分類したい。
『食戟のソーマ』第5巻
附田祐斗(作) 佐伯俊(画) 森崎友紀(監) 集英社 \400+税
(2013年12月4日発売)
ケース2は、『食戟のソーマ』(原作:附田祐人、作画:佐伯俊、協力:森崎友紀)からイサミ・アルディーニ。
日本人の父とイタリア人の母を持つハーフで、双子の兄タクミとは似ても似つかない肥満体型をしている。
彼も突如として激痩せするが、その理由はやはり夏バテだ。ケース1と同様に「体調不良型」だが、イサミの場合は第6巻で「秋冬にかけて体型も戻ってく」「毎年の事」と説明されるので、「体調不良型」の亜種の「体質型」と分類すべきか。
『私がモテてどうすんだ』第1巻
ぢゅん子 講談社 \429+税
(2013年10月11日発売)
ケース3は、ぢゅん子『私がモテてどうすんだ』の主人公・芹沢花依。
花依はBL大好きな腐女子である。大好きなアニメキャラが作中で死亡してしまい、ショックのあまり1週間寝こんだところ激痩せして美少女に。
学校中のイケメンから言い寄られるモテ期に突入する。ショックで痩せたのだから「心労型」だ。
『ONE PIECE』第11巻
尾田栄一郎 集英社 \390+税
(1999年12月発売)
ケース4は、尾田栄一郎『ONE PIECE』から女海賊アルビダ。
1巻の初出時には丸々と太ったソバカスだらけの女傑であったが、11巻で再登場時にはクビレのあるスリムな美女に変貌を遂げていた。
彼女は悪魔の実「スベスベの実」を食べたことから、摩擦ゼロのスベスベの肌を手に入れた。この「スベスベの実」で肉体改造に成功したわけだから「ドーピング型」である。
『あしたのジョー』第8巻
高森朝雄(作) ちばてつや(画) 講談社 \400+税
(1971年3月8日発売)
ケース5は、『あしたのジョー』(原作:高森朝雄、作画:ちばてつや)からジョーの永遠のライバル・力石徹。
過酷な減量をみずからに課し、幽鬼のような姿になってまでバンタム級で矢吹丈と対決することに固執した。食事はおろか水分すら摂取しないので、ダイエットや減量の域をはるかに超えた「絶食型」と分類したい。
夜中にジムを抜け出して、鼻からうどんを出しているような男とは根性の据わり方が違う。帰りにうどん食べてくようなボクサーには、「あした」は待っていないのである。(西ッ!! お前のことだ!)
以上5つのケースを見てきたが、体調不良とか心労とか絶食とかドーピングとか、ひとつも健康的に痩せた例がないじゃないかッ! マンガのダイエットはまったくオススメできませんよ、お姉さんッ!!
とはいえ、日本国民いつでもどこでも1億3千万総ダイエット王国な昨今の風潮は、あんまり健全とは思えないし、マンガみたいにムチャなダイエットをする人が出てもおかしくない。
そんななか、体重が変化しやすい年頃にも関わらず、食事制限と運動によって健康的にダイエットした鈴木香音さんは、あらためて賞賛に値する。
だからもし仮に彼女がリバウンドしたとしても、あんまりギャーギャー騒いじゃダメよ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama