『5つ数えれば君の夢』
今日マチ子 秋田書店 ¥900+税
(2014年8月15日発売)
東京女子流の初主演映画『5つ数えれば君の夢』コラボレーション作品の本作。
とはいえ、そこは今日マチ子。ありきたりの「映画の内容をコミカライズしました~」なんてことは、あるはずもなく……。
本作は、アイドルグループ「Five Stars」のアヤノ、ミユ、メイ、ユリ、ヒトミ、5人それぞれの夢のお話。
10代にして「夢」を叶えて人気アイドルになった彼女たち。でも「がんばって夢を叶えました! みんなありがとう!!」って、ステージ上でスポットライトを浴びてるだけじゃない。だってまだ10代、そりゃあアイドルになる夢は叶った。でも、これから先はどーなるの?
彼女たちは、若さゆえの傲慢ともいえる根拠ナシなお気楽さでもなく、中二病的なシニカルさでもなく、しなやかに人生に向き合っていく。
夢が叶ってヒールの高い靴を履き続けることが、たとえ「呪いの赤い靴」と言われようとも、自分で選んだこの靴が好きだから、靴がすり減って消えてなくなるまで踊り続けてみせる……という、ヒトミの覚悟が清々しい。
自分の夢が「大勢の他人の夢」でもあることを引き受けてステージに立っていくんだという少女たちの強さが、射抜くような怖さも持つ輝きを放って描かれる。
それが読みようによっては、男と女の深い溝としてのホラーに読めるかも。
<文・小山まゆ子>
フリーランスの編集・ライター。最新の仕事は、7月29日発売の宝島社刊『アニメCUTiE』の編集&ライティング。