『ディエンビエンフー』第10巻
西島大介 小学館 \724+税
1945年8月15日の太平洋戦争の終結で日本軍が撤退して以降、無政府状態のベトナムでの政権奪取に乗り出したホー・チ・ミンは、ベトナム八月革命を指揮する。そして同年9月2日に昭和天皇が降伏文書に調印し、正式に第二次世界大戦が終結を迎えると、同日にホー・チ・ミンはハノイにてベトナムの独立を宣言。ここにベトナム民主共和国が樹立し、ホー・チ・ミンは国家主席兼首相となる。したがって9月2日は、ベトナムの独立記念日(国慶節)とされている。
のちホー・チ・ミンは、ベトナム戦争末期に79歳で病死するが、彼の命日はくしくも9月2日だ。今日はベトナムにゆかりのある日といえるだろう。
ベトナムを舞台としたマンガ作品としては、本サイトでも特集した西島大介の『ディエンビエンフー』がある。
作品の舞台は、ベトナム民主共和国(北ベトナム)とベトナム共和国(南ベトナム)・アメリカが戦ったベトナム戦争である。主人公ヒカル・ミナミは米軍の従軍カメラマンで、1965年にサイゴンに着任早々、とある事件に巻き込まれ、ゲリラの少女と出会う。まるで絵本のような愛らしい絵柄で、戦場の凄惨さが描かれていく。そのギャップこそが、主人公と少女の戦場での出会いという、おとぎ話のような物語に、リアリティとファンタジーをもたらす。
現在、休刊が発表されている『月刊IKKI』(小学館)にて短期集中連載中。最新11巻は2014年10月10日発売予定だ。
既刊最新の10巻では、物語は1968年に突入する。この年はテト(旧正月)攻勢、ソンミ村虐殺事件と、ベトナム戦争でもターニングポイントとなった年だ。冒頭のプロローグで示された終着点に向けて、物語がどのように進んでいくのかを注視したい。
ちなみに、ヒカルが最初に着任したサイゴンは、ベトナム戦争終結を機に地名を変えた。現在の名称はホーチミン市である。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama