人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、師走ゆき先生!
対照的な二人のツンデレ応酬的のおもしろさと不意に放たれる胸キュンとのギャップに、中毒者続出中! 残念な俺様キャラの御曹司「高嶺」と負けん気の強い庶民派女子高生「花」の恋を描いた異色ラブコメ『高嶺と花』。
その待望の単行本第5巻を発売した著者・師走ゆき先生のインタビュー第2弾では、先生のルーツ、そして『高嶺と花』の今後に迫ります!
高校教師への反発精神からスタートした漫画家人生
――そもそも、師走先生が漫画家を志すきっかけはなんだったのでしょう?
師走
子どものころからイラストを描くのもマンガを読むのも大好きでしたが、「漫画家になりたい」とはっきり意識したのは、高校生の時です。それまでは絵は描けるけど、お話が作れないから漫画家はムリって、心のどこかでストッパーをかけていたんです。
それが、高校の先生の「日本が世界に誇る文化がマンガやアニメっていうのが残念」って言葉にイラッとして、「マンガを描こう!」と決意した。……反抗期だったんですかね(笑)。
――今となっては感謝ですね。それからデビューに至るまでの経緯はどのような感じだったのでしょうか。
師走
大学生になって時間に余裕ができたので、とりあえずマンガを描いてみようと道具をそろえたんです。どうにか2~3作描いて少年誌に投稿してみましたが箸にも棒にもかからず、しょげてしまいました。今思えば物語の体すらなしてないようなものだったんですが、自分では自信があったんですね(笑)。
で、2年くらい経ってまた描きたくなって、今度は「花とゆめ」に投稿しました。人物の表情を描くのが好きなので、少女マンガのほうが楽しいかなって。2年前に較べると多少上達していたのか、この時はちゃんと「マンガ」になってて。「王道マンガは競合するから勝てない」と思って奇をてらったような設定で描いたら、編集さんが「おもしろい」と言ってくださってデビューできたんです。
――たしかに、師走先生の作品は胸キュンは押さえつつも、いわゆる少女マンガの王道ではない、特にギャグセンスには並々ならないものを感じるのですが、そのあたりに影響を及ぼしていると思われるものって何か心当たりはありますか?
師走 うーん、どうでしょう。これまで感銘を受けてきたものが、あまりにも一貫性がなくて難しいのですが……。近年で一番衝撃を受けたのは『俺物語!!』ですね。笑いあり・涙あり・キュンあり・インパクトありで、すごいマンガだ! と感動しました。あとは、テレビのお笑いとかバラエティ番組とか、おバカだけどシュールな感じは『世にも奇妙な物語』の影響もありますね。
――毎回、書店での展開もすごく凝っていますよね。出版社さんや書店さんの作品への愛情もヒシヒシと伝わってきますが、先生もすごく楽しんでやってらっしゃる感じがします。
師走
書店さんでの展開は私自身も毎回、驚かされていますし、楽しみで仕方がありません。販売台のアイデアもすごいですし、販売台を駆使して装飾をしてくださる書店員さんのセンスにも脱帽です。
基本的には好きなように描かせてもらっている作品ですが、このような展開のお陰でたくさんの方々から反応をいただくようになったので、最近はいい意味で、読者さん目線も意識するようになってきましたね。
――今年3月の4巻発売時から現在まで展開中のキャンペーン企画「高嶺さんの天下取り!47都道府県視察参り」も最高です。ご当地名物コスプレをした高嶺さんの書店用立て看板や、同じくご当地アレンジの高嶺さんのスタンプ風画像など、爆笑必至のネタ満載で、こういうギャグがここまでハマってしまう少女マンガのキャラクターは、高嶺さん以外に絶対いません!
師走 ありがとうございます。これは3巻までとは違ったベクトルの宣伝を……ということで企画してくださったキャンペーンなんですが、47体も立て看板を作るなんて、すごいことですよね。『高嶺と花』という作品は本当に恵まれていて、ありがたいかぎりです。キャンペーンに使用されるご当地のイラストは、「ご当地にまつわるイラストを」という依頼があって描いたものなんですが、何を着せるかとか、どんなスタンプにするかといったネタの部分は、担当さんと雑談しながら考えさせてもらってます。別にネタに走る必要はないんですけど……どうしても走りたくなってしまうんですよね。
――やっぱり師走先生のベースは胸キュンより笑いなのでしょうか(笑)。単行本に特別収録されている番外編4コマもシュールなセンス炸裂で最高です。ストーリーものとは別に、こういったスタイルの作品を描かれる予定はありますか?
師走 これはオマケの番外編にもかかわらず、ひとつのネタを思いつくのにめちゃくちゃ時間がかかってまして……。4コマ作家さんの脳みそはどうなってるんだろう思います。なので、4コマだけの作品を描くのはちょっと無理そうですね。今後もオマケとして楽しんでもらえれば。
――4コマでも頻繁に登場する「低嶺さん」(高嶺を四頭身でギャグマンガ風にアレンジしたキャラクター。おもに高嶺のプライドが傷つけられたときに身長がキューッと縮んで低嶺になる)ネタもすばらしいらしい。サイン会でも大人気だそうですが、低嶺さんの誕生エピソードをぜひ教えてください。
師走
ありがとうございます。初登場した第7話では、単にひとつのギャグ表現(ショックを受けて小さくなるという…)として描いたので、こんなに定着すると思ってませんでした。
基本的には花との関わりのなかでへこんだ時に出現するキャラクターで、花に褒められたり、おだてられたりすることでもとに戻りますが、へこみの度合いによっては戻りにくいこともあります。低嶺単発での企画予定は今のところありませんが、低嶺さん人気は予想以上で驚きましたし、うれしかったので、これからも低嶺さんを推していきたいですね。
――『高嶺と花』の今後の展開について、可能な範囲で教えていただけますか。
師走 今まさに大きな事件を執筆中で、『高嶺と花』始まって以来の大事件になるので、はやく皆さんに読んでいただきたいですね。コミックスの6巻に入ると思いますが、気になる方はぜひ「花とゆめ」でチェックしてみて下さい。
――これからもご活躍、楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました!
取材・構成:井口啓子