話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『贄姫と獣の王』
『贄姫と獣の王』著者の友藤結先生から、コメントをいただきました!
『贄姫と獣の王』第1巻
友藤結 白泉社 ¥429+税
(2016年5月20日発売)
自らの背負った運命を、ある意味で“諦めた”者同士が出会う。
片方は生贄の人間の少女、サリフィ。彼女は最初から生贄として育てられたという人生を背負う。
片方は皆に恐れられる、人を喰らう魔族の王。彼は、王族としてあってはならない秘密を背負う。
そして今、彼ら2人が特別な絆で結ばれ始める。
マイナス同士を掛けあわせるとプラスになるように、2人での新たな“生”を生き始める――。
人間と人間以外の交流と恋愛を描く“異種族もの”は、いまや、いちジャンルとして確立する勢いで、高い人気を博している。
そのなかでもこの『贄姫と獣の王』は、オビにもあるようにまさに「異種ロマンス決定版」というべき作品だ。
舞台となるのは、瘴気漂う禁忌の地。
人を食す異形の魔族たちと、それを統べる王の住む世界だ。近くにある人間の国とはいまだいざこざが絶えず、人間は魔族を恐れ、魔族は人間を汚れた者として忌み嫌っている。
さて、魔族の王のもとに差し出された99人目の生贄、サリフィ。
彼女は王を前にしてもおびえることなく、「私はここであなたに食べられておしまい」だと淡々と語る。
王は、生贄を喰らう供儀(くぎ)の行われる“天啓”の夜までサリフィをそばに置くことにする。
サリフィはじつにフリーダム。
大きな獣の王を前にしてもまったく臆せず、鎖をつけたままで城中を探索し、楽しく日々を送っている。
見張りのキュクとロプスという魔族もあっという間に味方につけ、目を見張る大胆さで行動する。
だがその自由な様子が、王にも読者にも、心地よい。
たとえばこの花畑の場面。
王とサリフィの心が通い始めた頃に、“天啓”の夜がやってくる。
正装をさせられたサリフィが生贄として捧げられる日だ。
祭壇の間で待っていたサリフィだが、彼女の前に現れたのは王ではなく、王を討とうとする謀反人だった。
サリフィもまた殺されそうになる寸前、彼女を助けに入ったのは――。