『魔法使いの嫁』第3巻
ヤマザキコレ マッグガーデン \571+税
(2015年3月10日発売)
「魔法使い」という言葉から、あなたはどんなキャラクターをイメージするだろうか。
本作に登場する魔法使い・エリアスは大柄な身体に、恐竜の頭蓋骨をむきだしにしたような頭部を持つ男だ。
一見不気味な様相だが、シャツのボタンを一番上までかけ、ベストに黒いコートを羽織った装いは紳士的でさえある。
イギリスの片田舎に居を構えるエリアスが、日本人の少女・チセを高値で競り落としたのは、生まれつき妖精や怪異を見る力が備わっている彼女を“弟子”として、また“未来の嫁”として迎えるためだった。
『このマンガがすごい!2015』オトコ編で2位を獲得。世にあまたあるファンタジー作品から一歩抜きん出た本作は……なんだかおかしな言葉になってしまうが“地に足のついた”ファンタジーといえるかもしれない。
魔法だからといってなんでもアリのやりたい放題ではない。
魔法には本来さまざまな理(ことわり)があり法則がある。やろうと思えばなんでもできるが、やってはいけないことがある……たとえば石を金に変えるとか。
魔法は大自然と結びついた生活のなかで、病気を治すなど必要に応じて発達をとげたもの。
世界を二項対立でとらえることなく、自然の摂理に逆らうことなく――生を受けたこの世のすべてのものに意味がある、という思想のもとに展開する静謐で厳かなムードは、神話や伝承を根っことする古典ファンタジーのそれである。