初恋の人「田中くん」を忘れられない高校生1年生の吉岡双葉。3年ぶりに再会した彼は苗字も声も雰囲気もすっかり変わっていた。もう楽しかったあの頃には戻れないの――? 初恋、失恋、友情……高校時代の甘酸っぱいときめきがギュッとつまった王道青春ラブストーリー『アオハライド』。 10代の女子だけでなく20,30代の大人女子もとりこにし、コミックス累計発行部数が750万部を突破した最注目作品を生み出した咲坂伊緒先生を直撃!
王道の青春恋愛マンガでありつつ、人のホンネに踏みこみたい!
——『アオハライド』という作品には、10代の頃に感じるさまざまな思いがぎっしり詰まっていてキュンキュンさせられっぱなしです。正確にいえば、10代の頃を思い出してグッとくることと……それからこんな青春してみたかったと思う憧れがいっぱいで!
咲坂 とにかく恋愛をメインに思い切り“ザ・青春”みたいなものが描きたかったんです。そこは前作『ストロボ・エッジ』(集英社)[注1]も同じだったのですが、『アオハライド』ではさらに人のホンネというものを踏みこんで描いてみたいなと思ったんです。
——同性同士の関係もすごく「こういうことある!」と共感してしまうエピソードが満載ですよね。たとえば、双葉が高校入学当初、女子たちとうまくやるためにあえてガサツっぽいキャラを演じていたくだりとか。
咲坂 これに近い経験は私自身にもあって。グループのなかで、そのなかでの役割みたいなものを無意識に演じていたんです。でも、ある時それにふと気づいて「私って、誰?」と我に返る瞬間がありました。自分を作らずに、素のままでつきあえる友だちと出会った時の開放感はすごかったです。
¬——双葉も結局は自分を作るのをやめて、それまでのグループを離れて……でも、そのおかげで悠里と修子という新しい友だちができますしね。
咲坂 悠里はなんだかんだ自分のしたいことがはっきりしている人なので、その点での葛藤をあまりさせないようにと思っています。修子は……作中でいちばん「マンガのキャラ」っぽい人なので、この人には何させても大丈夫と思ってます。私にとって優しいキャラですね(笑)。
——悠里も修子とタイプは違えど、共通点は自分を持っていることですね。だから、自分を偽ることをやめた双葉も仲よくなれたのでしょうね。
咲坂 自分を作ってしまうことって、けっこうみんなやっていると思うので「双葉の気持ち、わかる」と思っていただけるように、双葉については感情の面でもできるかぎりくわしく、リアルにと意識して描いてます。
——ちょっとした会話のやりとりなども、「高校生の時ってこんなだった!」と思ってしまう描写ばかりです。高校生をこんなにみずみずしく描けるのはなぜですか?
咲坂 そう言っていただけるのはうれしいです! 学生時代のそういった思い出を、感覚的なところ含めてわりと細かく覚えているからかもしれませんね。
——『アオハライド』では、自分や他人のちょっとしたひとことや行動などについて、「あの時なんでこう言った(した)んだろう?」と深く考えるシーンが多いですよね。そこもまた10代らしいのですが。
咲坂 特別意識しているわけではないですが……でも、ひとつひとつ理由をあきらかにしていくのは、私自身に「納得したい」気持ちが強いからなのかも?
——読者にどんなことを感じてもらいたいという思いで、この作品を描かれていますか?
咲坂 何かが起きるのを待ってるだけで終わらないでほしいな、と。おこがましいようですが、だれかの背中を押せたら……と思っています。
——そこがまさに『アオハライド』の主題なんですね。中学時代、双葉は洸と意識しあっていたのに、洸の急な転校で離ればなれになってしまいます。第1話で描かれる、双葉のなかに芽生えた“明日を待っているだけじゃ始まらなかった”という気持ちは、グッと心に突きささります。
- 注1「別冊マーガレット」(集英社)にて2007年7月号から2010年9月号まで連載されていた恋愛マンガ。咲坂伊緒の代表作のひとつ。2015年には実写映画が公開予定(主演は有村架純/監督は廣木隆一)。