人々の願いを叶える後押しをする「有言実行委員会」。誰かの願いを叶えるなかで、自らも悩み成長していく少女たちの姿を描いた『花と落雷』で「このマンガがすごい!2014」オンナ編ランクインをはたした渡辺カナ先生。自身初の長編となる『花と落雷』にはどのような想いがこめられているのだろうか。お話を伺った。
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【インタビュー】描かない間もマンガのこと、ずっと思ってた。 『花と落雷』渡辺カナ【後編】
人が成長する、何かにハッと気づく瞬間を描くのが好き
——長編デビューとなる『花と落雷』が「このマンガがすごい!2014」オンナ編にランクイン、これを最初に知ったときどんなお気持ちになりましたか?
渡辺 予想外の出来事で、たいへん驚きました。でも、このおかげで少しでも『花と落雷』を読んでくださる方が増えてくれたらうれしいな、と思いました。本当にありがとうございます!
——恋愛、友情、人間的な成長が詰まっていて、とても充実した読後感でした。この作品はどのような構想から生まれたのでしょうか?
渡辺 お話を考える時は、いろんな方向からの要素をいっぺんに考えるので説明しにくいですが……「有言実行委員会」というアイデアが中心になってできたと思います。
——言葉のインパクトも強いですよね。
渡辺 私は完全に不言実行タイプなので、自分の意思をちゃんと口に出せる人っていいなぁという憧れがあるんですね。
——海美帆と八千代、2人が主人公と言ってよいと思いますが、すごくいいバランスの2人ですね。
渡辺 八千代が強烈な分、海美帆はなるべく普通の女の子に描こうと思いました。そのうえで、無敵でマイペースな八千代のことをわかってあげられる、本当の意味で友だちになれる女の子、というイメージです。
——海美帆が前向きに自分を変えていくところに心打たれます。短編作品にも言えることですが、主人公がだんだん成長していくところは、先生の作品に共通する読みごたえのポイントだと感じます。
渡辺 特にこだわっているわけではないんですが、人が変化していくところが好きだから描いてるのかもしれません。人が何かにハッと気づく瞬間とか……そういうのがすごく好きですね。
——2巻での、八千代の過去が明かされるパートはかなり意外であるとともに胸に迫る、説得力のあるものでした。
渡辺 人が亡くなることを描くのは精神的に辛いのですが……でも、この物語の中で、現在の八千代を語るためには重要なエピソードなんですよね。
——中学生時代の八千代に、尊敬する先生を亡くしたという大きな出来事があった驚き、そして八千代もその出会いによって大きく変わったという事実がストンと胸に落ちました。
渡辺 人が亡くなるっていうのは現実だし……あ、これはマンガですが……でも、お話の中では現実なので、ちゃんと向き合って描こうとがんばりました。
——有言実行委員会に加わる、超人見知りな四宮くんのキャラクターも、かなり個性的です! このような性格にしたのはなぜですか?
渡辺 見た目とギャップをつけたかったんです。ちょっと女々しすぎたかなぁ、と思いもしましたが(笑)。
——『花と落雷』は初めての連載作ですが、立ち上げる時点で苦労した点は?
渡辺 初めてのことで手探り状態だったので……結局は最初に考えたストーリーを8話分に割って描く、みたいな形になったような気がします。いろいろ考えたんですが。今、連載2作目をやっていますが、いまだにどういうやり方がいいのかよくわからないままです!
——現在「別冊マーガレット」で連載中の『ステラとミルフイユ』は、これまでで一番恋愛要素が強い作品のように思いますが、心がけていることはありますか?
渡辺 読者の方が読んで楽しいのはどんなことかな、と考えるのを忘れないようにしながら描いています。私が描いていて楽しいこととはイコールじゃないと思うんですよね。