日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『秘すれば』
『秘すれば』第1巻
かんの糖子 秋田書店 ¥562+税
(2015年8月20日発売)
ヤバい。
このマンガはとにかくヤバい。
どのページをめくってもこんなにドキドキしてしまうなんて、本当にどうしよう。
この強烈な吸引力、圧巻である。
可憐できゃしゃ、この上なく美しい姉、朱音(あかね)。そんな姉を見つめ続ける弟、青蒔(せいじ)。
姉弟が幼少の頃、とある夏に起きた秘密の事件から、青蒔の心には朱音が特別な形でくっきりと刻みつけられてしまっている。
ある日、偶然にも朱音が、SMプレイをしていることを知ってしまう青蒔。
それを見た時から青蒔のなかで何かが動き始め、姉弟の関係が少しずつ形を変えていくのだが……。
この姉弟、物理的には一線も越えていないが、精神的には一線どころか二線も三線も越えてしまっている。
男性向けと思いきや、絵柄の魅力もあって、女性もときめく内容だ。
まず表紙からすでに圧倒されるほどの、姉・朱音の美しさと色気。
青蒔の目線で描かれるからこそ彼女の魅力は倍加し、読者は本当に誌面に吸い寄せられてしまう。
朱音の漆黒の髪、肌を覆う部分も絶妙なボンデージ衣装、柔肌に触れた時の感覚さえ想像できそうな描線。
さらに、青蒔の視線の妙だ。男としての青蒔の視線は、朱音の身体のパーツをなまなましくクローズアップする。
それをコマ割りと画面構成で、じつに効果的に表現する、漫画としてのクオリティの高さ。
マンガという媒体がここまで活きることに、感動すら覚える。
さて第1巻は、さらにヤバそうな展開を運んで来そうな青年の登場で終わる。
秘められたものが少しずつ正体をさらけ出す、そんな期待感と高揚感にあふれたこの作品では、著者の掌で転がされるままに、この先がどうなるのかどぎまぎしながら待つしかないようだ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」