『フラグタイム』第2巻
さと 秋田書店 \600+税
(2014年11月7日発売)
だれにも決して邪魔されず、好きな人と2人きりになる究極の方法、時間停止。してみてえもんだ。
人づきあいが苦手な女子高生・森谷美鈴は、時間を1日3分だけ止められる。彼女が止めた時間のなかで、なぜか動ける村上遥。止まった時間のなかで過ごす時間は、2人だけのもの。
みんなの人気者でいい子な村上は、2人きりだと意外にエキセントリック。彼女の発案で、森谷は村上とつきあいはじめることになる。
一緒にいればいるほど、森谷はこれでいいのか不安になってくる。自分は、彼女は、本当は何をしたいのだろう……。
なぜ村上が森谷の止めた時間のなかで動けるかが、物語の鍵になる。
1巻では森谷からみた、3分間の村上の本音が描かれる。
2巻に入ると、村上にはだれにも言えなかったヒミツがあったことが明らかになってくる。それは、3分間に逃げこんではいけない。止まった時間ではないところで、昇華しなければいけない。
全編に渡って、人を苦手な森谷の緊張した感情が、画面を覆っている。時間を止めて、村上といる時だけのびのびした空気に変わる。
クライマックスに近づくほどに、止まった時間と動いている時間の緩急が、2人のキャラクターの心理そのものになっているのは見どころ。小さな嫉妬から、暴走する青春の叫びまでが、時間の静動と連動していく。
森谷と村上の抱える思春期独特の心の傷は、重い。
ただ、いきなりパンツから話が始まる軽快さは、ギャグの名手でもあるこの作者ならでは。シリアスなシーンは、2回目に読み返すとちょっとニヤリとできる、心地よい作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」