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『かごめかごめ』第1巻 池辺葵 【日刊マンガガイド】

2014/09/27


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『かごめかごめ』第1巻
池辺葵 秋田書店 \1,200+税
(2014年9月8日発売)


「修道院マンガ」と言えば、ちょっと身構えてしまいそうだが、著者はこれまでにも『どぶがわ』『繕い裁つ人』などの作品を通じて、孤独な人々の薄暗い日々をほのかに照らす、祈りにも似た思いを描いてきた池辺葵――とくれば、修道院という設定もこれ以上ないほどしっくりと感じられる。

神を信じ、神を敬い、我欲を捨てて神のために一生を捧げる修道女たち。彼女たちにとって「愛」とは、「祈り」とは、はたしてなんなのか?
「外の世界」をまったく知らず、物心ついた頃から神に遣えて生きることになんの迷いも疑問も持たない少女たちのキラキラした瞳と、彼女たちを指導し見守る、シスターたちの穏やかでどこか淋しげな眼差し。揺るぎない信念、諦念や悟り、抑えきれない情熱、ひそやかな予兆、裏切り、失望、永遠に満たされることのない心……。
決して語られることのない、顔に出すことすらためらわれる、さまざまな秘めた想いを、著者は日常のなにげない(けど意味深な!)会話とわずかな仕草や目線、淡い色彩と美しい光と影の陰影で抒情豊かに描きだす。
まるでサイレント映画のように静謐で豊かな……。なるほど、この世界観はオールフルカラーでしか表現し得ない!

神を裏切り、想いを寄せた男のよき妻として俗世の平凡な暮らしを手に入れた後も、何者かに祈りつづけるマルエナと、神への献身を貫いたアミラ。
どちらが幸福でどちらが不幸か、どちらの「愛」が正しいのか、真に「祈り」を必要とする人生はどちらなのか――?
よしながふみ『愛すべき娘たち』収録の修道院エピソードも思い出しちゃう、深淵なる愛をめぐる物語。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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