『秘密 -トップ・シークレット-』第1巻
清水玲子 白泉社 \676+税
本日、5月9日は告白の日。
「告白の日」は一年に数回あるのだが、語呂あわせ的にも今日は説得力がある。
これを機会に、言えなかったことを伝える日にするのもいいのでは?
さて、辞書によれば「告白」とは、「心の中に秘めていたことを、ありのままに打ち明けること。また、その言葉。」とある。
そう、大抵の場合、告白に言葉はつきものなのだ。
しかし今回はあえて、言葉にできなかった、もしくは言葉などまったく必要ないほどの「告白」が描かれた漫画をご紹介したい。
『秘密-トップ・シークレット-』は、精緻かつ美しい絵柄で、よく練られたストーリーを巧みに表現し、吸引力の強いエンターテイメントを生み出している漫画家・清水玲子による人気作だ。
過去にアニメーションにもなったが、2016年には実写映画公開も予定されていて、その評価の高さがうかがえる。
第1巻には、作品が描かれた年を副題とした「1999」と「2001」が収録されている。
「1999」の舞台は、2055年のアメリカ。
物語は、清廉潔白で知られる第57代大統領のリードが、休暇中に謎の死をとげたことから始まる。
死の真相を探り出すために使われるのは、大統領の「脳」。
この世界では、脳を生前と同じ状態に保ち「MRIスキャナー」という装置にかけると、その人が見ていた映像をスクリーンに映し出すことができるのだ。
だが無論、あくまでも「見ていた」ものであって、音声までは再生されない。
そこで読唇術の専門家兼アナリストのケビンが、大統領が見ていた映像から真実をみいだすべく、捜査にかり出されることになる。
死亡当日の映像により事件は殺人と判明したが、大統領は危険を顧みず犯人からパスケースをとり戻し、なかの写真を海に破り捨てていた。
その写真に写っていたものは? そしてケビンが見た、大統領の「秘密」とは――。
ここから先は、ぜひともマンガそのもので味わっていただきたい。
音のない世界で、マンガだからこその表現を用いて行われる、あまりにも雄弁な告白。
最初に読んだ時に思わず絶句したのを記憶しているが、今回の記事のために読み返して、やっぱり言葉が出なかった。
つまり、それほどの作品なのだ。
もう一方の「2001」の方は、「1999」から5年後を舞台にしたもの。
5年もたつと、日本にもMRIスキャナーを用いた捜査を行う「法医第九研究室」という機関が存在している。
ここの室長である美貌の薪剛(まき・つよし)警視正と、新人の青木一行(あおき・いっこう)を中心とした「第九」のメンバーが活躍するシリーズの第1作となるものだ。
こちらにもまた、音のない強烈な「告白」が待ち受けている。
なにぶんこの作品は殺人事件を扱うことがほとんどなので、なかなかにグロテスクな場面も多いのだが、それさえも清潔に描き出せる作家の絵柄が救っている。(正直私はグロいの苦手ですが、この作品は読めます)
非常によくできた推理ドラマ以上の作品で、そういうジャンルのエンターテイメントが好きな人にはぜひおすすめしたい。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」