日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ライアー×ライアー』
『ライアー×ライアー』 第10巻
金田一蓮十郎 講談社 ¥429+税
(2017年9月13日発売)
遊び心で女子高生に変装し、街に繰り出した女子大生の高槻湊は、偶然血のつながらない弟の透に出会い、正体を知らずにベタぼれされてしまう!
湊は、「野口みな」と名乗り、嘘を重ねながら透とつきあうことに。
そのうちに、湊は透が好きで、姉でもある自分自身を見てほしいのに、透が好きなのは女子高生の「みな」という架空の存在で……と、複雑な三角関係に陥る。
少女マンガの王道設定「義理の姉弟(兄妹)の恋愛」と、「本物の私より、変身後の私が好きなの?」といった懐かしの変身魔法少女チックなジレンマとが、ほどよくブレンドされた本作。
悪女になりきれないまじめで潔癖症な湊と、女癖が悪いが、好きな女性には一途な透にキュンキュンさせられたが、その結末は、見てのお楽しみ。
難敵である「のん気な両親」の前で、2人がどう振るまうかが見どころだ。
さらに、みなの時はできなかった、その先も……。
みなを演じた湊の「嘘」は、湊が好きな気持ちを隠した透の「嘘」を昇華させることになった。
湊の相談相手でもあるマキの「ちょっとした軽い嘘があるから 上手くいくことって少なくないよ」とのセリフは、女の子が抱えこみがちな罪悪感を軽くしてくれる。
完結巻となる今巻は、番外編で日本史同好会のメンバーの話もいっぱいだ。
湊を好きだった塚口先輩の意外なバックグラウンドが明かされ、何より、秘密を知りながら何度も湊にアタックした烏丸視点でのお話も、せつなくて泣かせる。
なかなかマニアックなサークル活動だが、お互いの個性を認めあう理想的なかたちだった。
湊がサークルクラッシャーなんかにならなくて、本当によかった……!
恋愛のみならず、サークルものとしても楽しく読める。
なんだかんだでお互いに一途だった湊と透は、やはりお似合いのカップル。
これは嘘偽りのない、真実だ。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌のほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集。とある学生街に在住し、いろいろと画策(だけ)しつつ、男児育てに追われる日々です。