『グッドナイト』第一巻
南Q太 祥伝社 ¥ 900+税
(2014年10月10日発売)
何これ、コワすぎ……。でも、読まずにはいられない!!
「フィールヤング」での連載開始当初から話題を呼んでいた、南Q太の『グッドナイト』は、発言小町も真っ青の、長男のヨメ残酷物語!
本人不在の親族会議で、産んだばかりの娘を奪われてしまった晴子。モラハラ鬼姑と性悪小姑がのさばる家で、口汚く罵られ、コキ使われ、次男が産まれても状況は変わらず。優しいがゆえに頼りのない夫は浮気に逃避、舅は要介護で姑にも痴呆の兆しが……って。
『さよならみどりちゃん』に共感しまくった世代としては、南Q太がこんなハナシを描くこと自体、ショック極まりない! が、読者の年齢層を考えると、もはや愛だの恋だのより、こっちのほうがリアルなのかも……と納得したり。
南Q太といえば、痛々しい女子のいびつでせつない人間関係を描かせたらピカイチの作家だが、ともすれば陳腐になりかねない昼ドラ的世界においても、その鋭敏な描写の「うまさ」は際立っている。
感情を昂らせたり、吐露することなく、ヘヴィな現実をただ淡々と受け入れて生きる晴子。その深い孤独や閉塞感を、いっさいの主観を排した定点観測的なタッチでじわじわと浮き彫りにしてゆく著者の手練は、どこか凄みすら漂っている。
はたして晴子がこの家から解放される日は来るのか? 真実を知った子供たちの未来は?
コワイもの見たさで読んだら最後、胸をわし掴みにされます!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて『おんな漫遊記』連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69