『週刊少年ガール』第2巻
中村ゆうひ 講談社 \429+税
(2014年10月17日発売)
少女のお腹に週刊連載マンガが掲載され始めた。
自分のしゃべる言葉が多重音声になって誰にも伝わらなくなった。
突然、身体が女の子専用の温泉になった。
憧れの女の子についてくわしく書かれている辞典を図書館で発見した。
……このような、絶対ありえない、少年少女の奇妙な出会いを描いた短編集だ。
たとえば、なぜか学校の美少女・上坂さんがガチャガチャフィギュアになっている回がある。話したこともないのに次の日、手に入れたフィギュアと全く同じシチュエーションが、本物の上坂さんに起こる。
なんてうれしいんだろう、そりゃ回すわ。
ところが次第にダブってくる。同じシチュエーションに飽きてきた頃、別の少女に「同じようでみんなそれぞれ表情があることに気づくはずだ」「ただそこにあってくれればいい」と叱責される。
その少女はというと、「上坂さんガチャを回していた少年」のフィギュアが出てくるガチャガチャを回し、自分の叶わぬ恋にため息をついていた。
起きていることはトンチンカンだ。しかしこの狂った内容をうまく使って、思春期の繊細な思いを表現していく手腕は見事。クスリと笑えて、少しせつない。
私が好きなのは、自分の身体が天秤になって、常に正解がわかるようになった少女の話。彼女の天秤は、好きな少年に傾く。するとマンガのコマが少年のいる方向に激しく左右に傾きはじめる。
マンガのお約束をもひっくり返してしまう。よくぞこれでネタ切れしないなー。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」